2011年06月11日

ゴールデンスランバー (伊坂幸太郎)

1963年11月22日。テキサス州ダラスにて、第35代アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディはオープンカーで市内パレードを行っていた。町中をゆっくりと走る車に乗って、笑顔を振りまく大統領の姿を、アマチュアカメラマンのザプルーダー氏が持つサイレント8mmフィルムがしっかりと捉えていた。

オープンカーはゆっくりとカーブをまわり、直線に入った。次の瞬間、一発の銃声とともにケネディ大統領の頭がガクンとうなだれる...

これが俗にいう、ケネディ大統領暗殺事件である。

私がはじめてこの事件を聞いたとき、大統領が暗殺されたのだから犯人も捕まったのだろう、と思った。実際に暗殺犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドが捕まった。しかし、多くの謎が未だに残っており、事件の真相は今もなお明らかになっていない。というのも、銃弾の軌跡や大統領暗殺時におけるオズワルドの位置などの状況を分析していくと、オズワルドが大統領を暗殺したとすることに矛盾が生じてしまうためである。その結果、オズワルドは暗殺犯に仕立て上げられたとする説も有力視されている。

もしこの説が正しいとすると実際には何が起きたのだろうか?もしこの説が正しいとすると、オズワルドはどんな心境だったのだろうか。もし自分がオズワルドの立場にさせられたら...。

以下に、ネタばれに注意しながら、本書のあらすじについて簡単に述べてみる。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン

続きを読む
posted by lhflux at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月19日

のぼうの城 上・下 (和田 竜)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

「のび太 vs 仮面ライダー」勝つのはどっち?

のび太というのは、「ドラえもん」に登場する、あの「のび太」である。

なにをバカなことを…、そんなの言うまでもないだろう、と思うかもしれない。そう、あえて言うほどでもないのだが、勝つのは仮面ライダーである。それが1対1のタイマン勝負なら。

では、チーム戦ならどうか。

ドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃん率いるチームのび太。これに対するのが、歴代の仮面ライダー達が総集合した夢の共演、チーム仮面ライダーズ。

一見すると、チーム仮面ライダーズの方が、数も多いし、圧倒的に有利にみえる。しかし、ドラえもんの映画ファンなら反論したくなるかもしれない。普段はいじめられっ子でリーダーシップのカケラもみせない"のび太"。だが、映画でみるように、いざとなったときのチームのび太は、固い結束力をみせ、思いもよらない力強さを発揮する。

そんなこと言ったって、アレはただの映画でしょ。

そう思った人は、2010年のサッカー日本代表、スター軍団と呼ばれるレアルマドリード、日本のプロ野球球団のジャイアンツを思い出してほしい。弱小と言われたサムライブルーの大健闘、勝って当たり前と言われるレアルマドリードのチャンピオンリーグ予選敗退、ジャイアンツの転落。

そしてなにより、歴史がそれを証明してる。その歴史とは、映画化も決まり、2011年秋に上映予定の本書「のぼうの城」である。以下にネタバレしながら紹介してみる。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン

続きを読む (ネタバレ注意)
posted by lhflux at 19:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月15日

インシテミル (米澤 穂信)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 3 点

インシテミル。

何かの暗号だろうか。

いんしてみる。

in seeing the meal.

inしてみる。

インして観る…

と、タイトルから謎な雰囲気をかもしだす本書。その雰囲気どおり、2010年度版「このミステリーがすごい!」の第1位を見事に獲得した小説なのだそうだ。ただし、本の帯をよくよくみてみると、「作家別得票」という文字が小さく書かれていた。大賞ではなく、第1位。しかも作家別なんて枕詞付きである。なんだかウサンくさいなぁ。そう思って本書の紹介文を読むと、これがまたウサンくさい。そこには、次のアルバイト募集記事が紹介されていた。

アルバイト募集
時給11万2千円。
年齢性別不問。一週間の短期バイト。ある人文科学的実験の被験者。一日あたりの拘束時間は二十四時間。人権に配慮した上で、二十四時間の観察を行う。期間は七日間。食事は三食提供。個室の用意あり。ただし、実験の純粋性を保つため外部からは隔離する。拘束時間は全て時給を払う。

時給11万2千円 x 24時間 x 7日間 = 18816000円

つまり、総額およそ2千万円のバイト代になる。こんなアルバイトに応募すると、果たしてどうなるのであろうか。気になる方は、文庫をどうぞ(amazonへ)。以下、ネタバレOKな方のみどうぞ。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン

続きを読む(ネタバレ注意)
posted by lhflux at 20:39| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月04日

下流の宴 (林 真理子)

総得点 (15点満点) : 14 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 4 点

まさか自分の息子が、中卒になろうとは考えてもみなかった。中卒の息子を持った母親ならみんなそう思うであろう。中卒があたり前の、中卒の親なら話は別だろうが。

ごく普通に育てたつもりだ。塾を強制することもなかったし、ゲームを取り上げたこともない。有名教育評論家の本に書いてあることをなるほどと思い、土日だけ時間を決めてやらせるようにした。朝ご飯は必ず食べさせ、日曜日には博物館や美術展に連れていった。

しかし息子は、地団駄を踏みたくなるような子どもであった。小学校中学校になっても、意欲や好奇心というものがまるで希薄なのだ。先生から言われたとおり宿題はするが、それ以外に、自分で図鑑をめくったり、人に聞いたりすることもない。

本書の主要な登場人物である由美子の言葉である。夫、娘、息子の4人家族で、息子の翔は高校を中退し、アルバイト生活をしている。現代でどこにでもあるような、いわゆるごく普通の一般家庭ともいえる。小説では、母親である由美子の苦悩と、息子である翔の心情という、母親と息子の両方からの視点で描かれており、家庭内の問題を驚くほど上手に再現している。上で引用した部分に、なにかしら感じるものがある人にとっては、本書をおススメしたい。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン
続きを読む(ネタバレ注意)
posted by lhflux at 17:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月03日

プリズンホテル 4:春 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 15 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

まさに、芸術作品。

プリズンホテルを全巻読み終えた後の私の感想である。普通、芸術作品というと絵画や彫刻といった美術関係の作品のことを指す。しかし、ここでいう芸術作品とは、そういった美術関係に限らず、人々の心に深く突き刺さり、人々の価値観をも変えてしまう作品のことをいう。そして、そういった芸術作品には当然、小説も含まれる。

たしかに、世の中にはみんながいい小説と思うものも多くある。しかし、作家の浅田次郎先生に言わせれば、そんなのはただそれだけの小説である。そして、そういった小説と、芸術作品とは全く異なる。本文中には次のように書かれていた。

「みんながいい小説だと思うだろう。だが、それだけのものさ。一晩たてば忘れちまう。読者の人生観も世界観も、何も変えない」(p.266)

真の芸術作品というのは、読者を感動させるだけでなく、その人の人生観や世界観をも変える。以前に"ゴールは偶然の産物ではない"の書評で紹介したように、リーガ・エスパニョーラ (スペインリーグ)に所属するFCバルセロナが魅せるスペクタクルなサッカー、ベートーベンが作曲した交響曲第4番の通称"運命"、盲目のピアニスト辻井伸行氏が奏でるラフマリノフ、印象派画家アルフレッド・シスレーが描く風景画など、どの作品も、私の好みではあるものの、人々の心を動かし、価値観を変えるだけの力がある。そして「プリズンホテル」にも、これら芸術作品と同じ印象を私は受けた。

ただし、プリズンホテルが芸術作品と呼べるのは、全4巻を通しての話しである。たしかにプリズンホテルは1巻ごとに飽きない工夫が施されて、個別に読んでも十分楽しめたりはする。それでも全体を振り返ってみてみると、起承転結ならぬ、 起"笑"転結として構成されており、最後の第4巻にてしっかりとすべてを締めることで芸術作品としての完成度を高めている。

もしあなたがまだプリズンホテルを読んでいないなら、こんなくだらん書評を読んでないで、今すぐプリズンホテルを大人買いして、自分の人生と向き合う方がよっぽど有意義な時間が過ごせると思う。以下にアマゾンリンクを貼ってみたので、自分の人生に正面から向き合いたい人は是非、読んでみてほしい。
夏 プリズンホテル(1) (プリズンホテル) (集英社文庫)秋 プリズンホテル(2) (プリズンホテル) (集英社文庫)冬 プリズンホテル(3) (プリズンホテル) (集英社文庫)春 プリズンホテル(4) (プリズンホテル) (集英社文庫)

そしてプリズンホテルを読み終えた方は、よかったら続きをどうぞ。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン
続きを読む(ネタバレ注意)
posted by lhflux at 21:10| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月08日

プリズンホテル 3 冬 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 13 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

最近はビジネス書ばかりを読んでいて、ちょっと息抜きが欲しいところであったので、禁断のプリズンホテルを手にした。プリズンホテルは全4巻から成り、登場人物はほぼ同じでも、1巻ごとにストーリーは完結する。一度読み始めると止まらなくなり、1つの巻を読み終わるころには、なぜかスサんだ心が癒されている。当然、1つの巻を読み終えるとすぐに次の巻を読んでしまいたい衝動にかられるが、プリズンホテルが永遠に終わって欲しくないという願望も相まって、私にとってプリズンホテルは禁断の書となっている。今回はこの攻防にて、続きを読みたい気持ちが勝ってとうとう3巻を手にしてしまった次第である。

みんビズ!の書評ではビジネス的視点で書いてみた。ここでは、プリズンホテルの魅力について考察してみたい。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 09:29| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月26日

蒼穹の昴 4 (浅田 次郎)

蒼穹の昴 最終巻は、ずいぶん前に読み終わっていたのだけれども、いろいろと調べごとがしたくてブログへのアップがかなり遅くなってしまった. 気がつけば、2010年1月2日から蒼穹の昴がNHKドラマでスタートする. この蒼穹の昴のNHKドラマについて、JALの機内誌で浅田次郎氏が、"西太后役となった田中裕子さんの演技がものすごくはまっている"というようなコメントを言っていたような気がする. ちょっと楽しみ. そして1月2日といったらもうあと少しである. それまでに読み終わってとりあえずはよかった. この蒼穹の昴を読んでみて、今まで全く興味のなかった論語や近代史の楽しさを、なんだか初めて知った気がする.

さて、これまでの1〜3巻までの書評をリンクしてみる.
1巻
2巻
3巻

最終巻では、西太后率いる旧派と、清王朝の改革を迫る変法派との対決にいよいよ終止符が打たれることになる. そして結末では、歴史的な要素よりも小説要素が色濃くなり、春児や史了の心情が語られるくだりとで結ばれる. 全巻を振り返ってみると、蒼穹の昴では、歴史的な出来事を時代背景として、登場人物に個性を持たせた歴史小説と言えるのだろう.

浅田次郎の作品を歴史小説家として有名な司馬遼太郎の作品と比較するとなかなかおもしろい. 個人的な見解だが、司馬遼太郎の描く主人公は、例えば"竜馬がいく"の坂本竜馬のように、常人離れした能力をもつヒーローを描くのに対し、浅田次郎の小説の主人公は、能力があってもどこかに欠点をもつ、人間味あふれる庶民派としての印象をうける. どちらを好むかはその人の性格にも依存するのだろう.

私が気になったことは、蒼穹の昴の登場人物のうち誰が歴史上の架空の人物で、誰が実在した人物か、である. これについてちょっと調べてみたので以下にそのことについて書いてみる.

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 09:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月09日

蒼穹の昴 3 (浅田 次郎)

いよいよ歴史が動き始め、清の崩壊が徐々に迫ってきている、そんな第3巻に突入である. 単行本では、蒼穹の昴は上下巻として売られていた. これが文庫化するときに4巻にまとめられたようだ. ここまで読んでくると、文庫本の各1巻がそれぞれ起承転結に相当するように感じる.

そこでこれまでを簡単に振り返ってみよう.

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 08:46| Comment(1) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月30日

蒼穹の昴 2 (浅田 次郎)

"蒼穹の昴"第2巻である. ちなみに、タイトルにある"蒼穹(そうきゅう)"というのは"青空"という意味だそうだ.

さて第1巻では、主人公の李春雲(春児)が浄身し(宦官になるために男性器をとること)、その幼なじみの梁文秀(史了)が官史となった.第2巻では、その二人が成長し、出世していく様子を描いている. それと伴に清王朝の実体も徐々に明らかになっていく. 特に政治の実権を握っている西太后慈禧(老仏爺と呼ばれている女傑)の心情を描いた場面は、仮に作者の想像だとしてもなかなか見ごたえがある.

中学や高校で習った歴史の教科書では、ただ事実が述べられているだけでちっとも覚えられなかったが、この蒼穹の昴のように、春児と史了といった、ある個人からの視点で歴史を説明されると非常に分かりやすい. 歴史の面白さというのは、その時代背景を考慮しつつ、人物像を自分なりに勝手に想像できるということも一つの要素なのだろう. 私にとってはちょっとした発見である.


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 07:14| Comment(1) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月27日

極北クレイマー (海堂 尊)

総得点 (15点満点) : 8 点

内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 3 点, 感動 (1-5) : 2 点

久しぶりに海堂尊氏の新作を読む. といっても発売されてからもうだいぶ時間が経ってしまった. 幸いにして、この本はまだ文庫化されていないようなので、海堂ファンを名乗ってもまだ許されると信じたい.

内容は医療問題を背景にした社会派小説である. 地方自治体が経営するつぶれそうな病院(ここでは北海道の地方都市を想定)を舞台にして、産婦人科医師の悲惨な現状を描写している. 小説を取り巻く大きな流れとしては、"チームバチスタの栄光"から続くシリーズモノとなる. "チームバチスタの栄光"では、ミステリー小説として売り出されていた. そして、その後の作品である"ナイチンゲールの沈黙"と"螺鈿迷宮"くらいまではなんとかミステリー小説と呼べる体裁が残っていた. それが"ジェネラル・ルージュの凱旋"から徐々に社会派小説へと舵をきりはじめ、"イノセント・ゲリラの祝祭"や本作品では、もうミステリー色はほとんどなく、社会派小説へと変貌してしまった.

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 09:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月23日

蒼穹の昴 1 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 13 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点


先月に海外出張したとき、JALの機内誌に掲載されている浅田次郎のエッセイを読んだ. その記事で浅田次郎の"蒼穹の昴"がNHKで連続テレビ化されることを知った. 浅田次郎ファンとしては、なんとしてもテレビ放送される前に読んでおきたい. テレビ放送のスタートは2010年1月からとなっていて、幸いにしてゆっくり読むだけの時間がまだある. そこで寄り道しながら"蒼穹の昴"を楽しむことにした. 今回は全4巻のうちの第1巻である.

内容は中国の清王朝の末期を舞台にした歴史小説である. この本で繰り広げられる歴史がどこまで正しいのか私には分からないものの、ストーリーはすごく面白い. ただし、中国が舞台というだけあって難しい漢字が多く、登場人物の名前を覚えるのが大変である. というのも、中国の名前には名と字(あざな)があり、さらに親しい者同士の呼称も加わり、慣れるまでは誰が誰だか分からなくなってしまう. それでも細かいことは気にせずに読み進めると全体のストーリーはしっかりと把握できる. このあたりは浅田次郎の文章力がなせる技なのであろう.

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
続きを読む
posted by lhflux at 14:48| Comment(2) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月02日

プリズンホテル 2: 秋 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 13 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 3 点, 感動 (1-5) : 5 点

ここ数日、朝起きるのがものすごくイヤだった. というのも、仕事が全然うまくいかず、時間が経ってもあせるだけで思ったように事が捗らない. やる気もどんどんなくなり、もう会社に行くのがイヤになってしまった. あー、もうヤダ. 仕事なんかしたくない. でもやらないといけない... このままじゃストレスで病気になりそうだ... かといって仕事を投げ出すだけの度胸もない orz. 泣きたい...

そんな思いで、浅田次郎のプリズンホテル2を手に取った. これが私にとって大正解であった. 読み終わると、心が癒され、元気になれた.

内容は、前作のプリズンホテル1 と同様、人里離れたホテルで繰り広げられる人間模様を描いたもの. ホテルのオーナーと従業員の大半が極道関係者という、現実離れした情況設定で、ストーリー性としては乏しい. しかしここで織り成す人間ドラマには、人生の縮図が描かれている.

このホテルへ宿泊しにくる客は、日ごろの生活で精神的にやられてしまったような、ワケアリの客が多い. 一方、ホテルの従業員は、オーナーを含めてみな義理人情に厚く、どんな宿泊客に対しても分け隔てなく誠心誠意でおもてなしをする. 従業員が極道関係者というだけあって、このおもてなしの仕方は半端ではなく、命懸けで行われる. そんな誠意によっておもてなしを受けた宿泊客達の心はいつのまにか癒され、最後は晴れ晴れとした気持ちでこのホテルを後にする.

私の場合は、感情移入しやすい性格のためか、宿泊客と同じく、この本を読み終わるときにはすっかりと癒されてしまった. 精神的に疲れている読者にはおすすめの一冊である.

この小説は、最初ゆっくりとしたテンポで進み、宿泊客達が全員ホテルに到着すると徐々に話が加速する. その後、花沢一家の早とちりな騒動に笑い、出世することなく定年を迎えることになりそうな巡査部長(ナベ長)の真摯な態度に涙しながら、話が進んでいく. そして、いよいよクライマックスを迎え、秋のような、せつなさが残りつつもどこか美しい印象につつまれつつ終わる.

子供の無邪気さで涙を誘う話しに弱い私は、朝の通勤電車内であったにもかかわらず、最後のクライマックス(子供系で泣かせる内容) を読んで涙が止まらなくなってしまった. そのため、職場へついたときには、すでに目が真っ赤になっていた. とりあえず、誰かにつっこまれそうになったら、昨日は徹夜したことにしておこう.

続きを読む
posted by lhflux at 09:32| Comment(0) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月24日

草原からの使者 (浅田次郎)

総得点 (15点満点) : 13 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

家の本棚をあさっていたら、この本がでてきた. また妻がこっそり浅田次郎の本を買ったのだなと思って聞いてみたら、彼女は買ってないと言う. どうやら私が買ったらしい. 自分が買ったことすら覚えていないなんて、なんとも情けない.

気を取り直して本を読んでみた.

内容は、簡単にいうと、全部で4つの短編小説を合わせただけのもの. それぞれが一人の話し手によって語られるのだが、それらの話題はお互いに全く関係することがない.

しかし、さすがは浅田次郎. バラバラにみえる短編小説でも、不思議と小説全体の調和がとれているのである. その役割を担っているのが、女装している沙高樓の主人、小日向君、および小説家である"私"の、3人の登場人物達である. 彼(?)らは決して主役に躍り出ることはないのであるが、ところどころに登場して、この小説に微妙なアクセントをつけている. 彼らがいないとバラバラになってしまう4つの話題も、彼らのおかげで妙な統一感をもたらしている.

例えるなら、彼らは、なくてもよいがあるとうれしい、ちょうどハンバーグランチの隅っこにたたずんでいるパセリのような存在である. ハンバーグランチにパセリがあろうがなかろうが、メインのハンバーグの味にはなんら影響を及ぼさないものの、パセリが無いとなにかが物足りないなーと思わせてしまう. 私はこういう細かい気遣いが結構好きである.

彼らの影ながらの演出もあってか、それぞれの4つの話題は、しっかりとしたオチも用意されていて、なかなか面白かった. 解説を読むと、どうやらこの草原からの使者は、"沙高樓綺譚"の続編であるらしい. たしかに、サブタイトルにはこの名前がついている. 私は先に"草原からの使者"を読んでしまったが、全く問題を感じなかった.


ランキング書評・レビューに参加中.
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
続きを読む
posted by lhflux at 09:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月11日

プリズンホテル1: 夏 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 12 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

家の本棚に私が買った記憶のない、浅田次郎の本が置いてあった. どうやら妻が買ったらしい. "どうだった?"と妻に聞いてみたら、"途中で読むのをやめた"といっていた. なんだつまらないのか、と思いつつも読んでみたら、これがなかなか面白かった.

内容は、浅田次郎らしくいたってシンプルである. やくざがオーナーとなったホテルを舞台に、そこに集う人間模様を描いたものだ.

小説はしり上がりに面白くなっていくのだが、どうやらうちの妻は面白くなる前に読むのをやめてしまったようだ. 小説の前半では、女性が虐げられる描写が多いのであるが、うちの妻はそれが気にいらなかったみたいである. ただし、主人公の木戸孝之介が女性を虐げるのは、男性のメンタルの弱さを現しており、この小説のクライマックスにも関係してくる重要な要素である. 読み終わると、やっぱり男性はメンタル的に弱く、女性は強いなーとあらためて思った.

今回の小説では、浅田次郎のバランス感覚の良さを強く感じた.

人間の感情を表す言葉として、"喜怒哀楽"がある. 一般的に、小説の中で、これら4つの感情を同時に扱かおうとすると、話しがどんどう発散していき、収集つかなくなってしまう場合が多い. この小説でも、これら4つの感情を扱っているため、話しがどんどん発散していく. 私も、この小説を後半まで読み進んだとき、最終的に話しがまとまるのかな?と心配してしまった. しかし、不思議なことに読み終わってみると、最後にきっちりまとまっているのである.

浅田次郎はすごいと思った.



ランキング書評・レビューに参加中.
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


続きを読む
posted by lhflux at 11:40| Comment(0) | TrackBack(3) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月01日

さまよう刃 (東野 圭吾)

総得点 (15点満点) : 12 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

"容疑者xの献身"を読んで以来、東野圭吾もなかなかいいなと思うようになってきた. そんな時、書店を訪れると"さまよう刃"が文庫化されていたので買ってみた.

この本は、現代社会の法律に関する問題点をテーマにした社会派小説だろう. 社会派小説といえば、宮部みゆきの"理由"もその分類になるだろう. ただし、"理由"は複雑な社会システムの問題点に焦点をあてて、それを小説風にうまくまとめているのに対し、今回の本は、社会システムの問題を指摘してはいるものの、それよりはむしろ人間感情に焦点をあてて話しを展開しているように思う.

話しの内容自体は比較的シンプルである. 最愛の一人娘(絵摩)が少年達に強姦され、さらにそのまま殺害された. その少年達が仮に警察に捕まったとしても、今の法律ではたいした罰をうけることはなく、数年したら世に平然とでてくる. それを知った娘の父親(長峰)がどのような行動にでるか? 簡単に言うと、このような話しの流れである.

まあ、言うまでもないと思うが、その父親は報復行動にでる. それだけと言えばそうなのだが、読んでみるとなかなか心にズシリとくるものがある.


ランキング書評・レビューに参加中.
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
以下ネタバレ要注意
posted by lhflux at 22:28| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月31日

イノセント・ゲリラの祝祭 (海堂尊)

総得点 (15点満点) : 9 点

内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 3 点, 感動 (1-5) : 3 点

最近、仕事が忙しくて、なかなか更新できなかった. なんだか久しぶりの更新である.

さて、前回に引き続き今回も海堂尊の作品である. こちらの方は、ジェネラル・ルージュの凱旋と違ってまだ文庫化されていないようだ.

今回の作品は、ミステリー要素がほとんどなく、シリーズ物によくある中休み的な仕上がりである. ジェネラル・ルージュの凱旋の後にすぐに読んだせいもあるかもしれないが、これまでの作品と比べてもいまひとつだった.

主な内容は、厚生労働省を舞台に、白鳥をとりまく環境が明らかにされていく. ここでは、厚生労働省内部の対立構造や、姫宮の潜入捜査、警察庁にいる斑鳩室長の不審な動きがところどころに描かれており、次回作への布石が打たれているように感じた. 次回作では、姫宮が"北"に潜入した様子や、斑鳩が仕掛けた細工などが描かれるのではないかと勝手に想像している.


ランキング書評・レビューに参加中. よかったら、ポチっとお願いします.
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


続きを読む
タグ:小説 海堂尊
posted by lhflux at 14:10| Comment(0) | TrackBack(5) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月16日

ジェネラル・ルージュの凱旋 (海堂尊)

総得点 (15点満点) : 12 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

正月に実家へ帰ったとき、家の本棚に"ジェネラルルージュの凱旋"と"イノセントゲリラの祝祭"が新書であったので持って帰ってきた. つい最近、"ジェネラルルージュの凱旋"の文庫本が発売されたばかりで、新書のありがたみが減ってしまったが、まあいいか. それにしても、新書がでたなーと思ったら、あっという間に文庫化されていてびっくりである. しかもわざわざ上下巻にしているし. まあ、このあたりは出版社の販売戦略によるのだろう.

早速順番どおり、"ジェネラルルージュの凱旋"から読んでみた. 読み始めてまず思ったことが、文章がうまくなったと感じたことだ. 前作までと比べて、分かりにくい比喩がなくなり大変読みやすくなった. そのためテンポよくストーリーが展開し、また、内容もこれまでどおり推理小説のようなミステリー要素を含み、楽しめた.

今回は、救命救急を舞台に、人間関係や医療問題を扱っている. 医療問題としては、収益至上主義における現代医療の問題点を指摘している. 昨今のニュースでは、妊婦の救急車たらいまわしや医療誤診などをとりあげ、医者の問題ばかりを指摘する報道が目立つ. しかし、現場医療では、過酷な労働条件を強いられており、一外に誰が悪いとはいえない情況だと思われる. 特に、著者の表現を引用すると救命救急・産婦人科・小児科と、社会的に重要性が高いが人手がかかり収益性が低いと書かれているように、救命救急、産婦人科、小児科は病院ではお荷物扱いされているようだ. 小説ではジュネラルルージュこと速水の鬼神ぶりが描かれていて、それはそれで楽しめるのだが、それと同時に、著者の訴えとして医療問題の深刻さが聞こえてくる.


以下ネタバレ
タグ:海堂尊 小説
posted by lhflux at 07:39| Comment(2) | TrackBack(6) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月27日

TENGU (柴田哲孝)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 3 点

京都へ出張に行った時に、駅前にあった本屋でこの本を買ってみた. POP広告がついてたのが目についたが、なんて書いてあったかはよく覚えていない. この本の著者について私は全く知らなくて、しかもなんだか危険な香りのするタイトルだったので、ちょっと冒険心をだしてこの本を手にした.

まあまあ面白かった. 内容は、とある村で起きた殺人事件の真相を主人公である新聞記者が追うというもの. 村の噂では、この事件は天狗のしわざということになっている. 果たして、天狗の正体は.... という具合に話しが展開する. この小説の最大の山場は、天狗の正体がDNA鑑定とその後の調査で明らかになるときだろう. 私もこの瞬間が一番ドキドキした. そこを過ぎると、後は惰性で進んでいく. 天狗の正体については、読んでからのお楽しみということで、ここでは書かない.


続きを読む
posted by lhflux at 16:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月21日

容疑者xの献身 (東野圭吾)

総得点 (15点満点) : 15 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

私は東野圭吾がきらいである. 彼の著書である"秘密"や"白夜行"を読んで、なんとなく文学的なところが嫌だった. また、世の中の流行を追うのも嫌いである. さらに、ランキングや売れ筋本といった類の本を信用していない. 今回購入した"容疑者xの献身"はこの私のきらいなものすべてに当てはまっている. とはいいつつも、主人公が天才数学者と聞くと、理系研究者の私としては読んでみたくなる. しかも、テレビドラマ化するずっと以前に"探偵ガリレオ" を読んでいて、その続編というのも気になっていた. 最近は他に読みたい本もなかったので、私のこだわりを捨てて買ってみた.


泣けた. この本を読んですごくよかったと思った. 私の完敗です. これはまぎれもなくいい本です. ランキング上位も納得です. 私がまだまだ未熟者でした. 世の中のみなさま、すみませんでした.

続きを読む
posted by lhflux at 14:22| Comment(0) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月16日

地下鉄に乗って(浅田次郎)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 2 点, 感動 (1-5) : 4 点

最近はビジネス書ばかり読んでいて、それにもちょっと飽きてきたので、しばらく小説を読むことにした. うちの子が電車に興味をもち始めたことにも影響されて、浅田次郎の鉄道本を2冊買ってみた."鉄道員"と"地下鉄に乗って”である.

まず、"鉄道員" を開いてみたら、びっくりしてしまった. 小説だと思って買ったらマンガ本であった. 大変ショックである. 今度はおそるおそる"地下鉄に乗って”を開いてみた. こっちは小説であった. あーよかった. あの小説風の表紙でマンガを売るのはまぎわらしいのでやめてほしい. マンガでも"鉄道員"は泣けるけど...

続きを読む
posted by lhflux at 08:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。