2012年01月21日

30代ビジネスマンのジレンマ:『人間学入門 人間力を高める』


Worried! / photoloni


仕事が楽しくなるのはいつごろからだろうか。

私の経験的には、毎日の仕事をそれなりに一生懸命やり続けていると、おおよそ5年もすれば仕事のコツも覚え、それと同時に仕事の醍醐味も味わえるようになってくる。そうなってくると、仕事が楽しくなる。5年間というのは、一日8時間勤務で月20日勤めれば、9600時間に相当する。約1万時間である。以前に読んだ「天才!」によれば、その道のプロとなるのに必要なおおよその時間が1万時間であると述べられていた。そう考えると、仕事を5年間続ければ楽しさも覚える、というのもそれなりに妥当な意見ではないだろうか。

そんな私を含めた今の30代は、それなりに仕事もできて、上司からは信頼され、部下からは頼られ、仕事に自信がついてくる時期かもしれない。部下の仕事ぶりを見ながら、「オレなら1週間もあれば余裕でできるのに、なんであんな仕事に2ヶ月もかかるかなぁ」なんてボヤいてみたり、できない上司から仕事を頼まれて「しょうがねぇなぁ、できるのはオレしかいないからやってやるか」なんてエラそうに思ったりすることもあるのかもしれない。そんな経験をしていると、だんだん天狗になってきて「やっぱりオレはすごい。今のオレなら何でもできる。」と増長してしまう。そんな態度を冴えない上司から指摘されようものなら「あいつは何をエラそうにオレ様に指図してくるのだ。自分では仕事ができないくせに、仕事のできるオレのことを妬んでるに違いない」なんて考えたりして、さらに高慢な態度になってしまったりする。

しかし、そんな時期もそう長くは続かない。仕事を自分一人でこなす分には問題なくても、マネジメントに関わるようになったり、人を動かす立場になってくると、途端にうまくいかなくなったりする。それに加え、今回の震災である。あれだけの災害であるから、被災者の方を助けてあげたいし、"優秀"な自分なら何か役に立てるはずだと思うこともあるだろう。けれども、ボランティア活動に行ったとしても、体力のある20代にはかなわないし、日頃のディスクワークで体が思ったように動かなくて役に立たない。さらには、自分の家族に多大なる迷惑をかけてしまい、身の回りを省みると自分の妻や子供から非難の目を向けられてしまう。それならば義援金でサポートしようと思っても、普通のサラリーマンである自分が出せる金額なんてたかが知れているし、孫正義氏のような男気のある行動には足下にも及ばない。ヘタすれば、義援金詐欺に引っかかっただけで、被災者の方々のなんの役にも立たなかったなんてこともあるだろう。その結果、仕事で得られた自信が揺らぎ、「やっぱりオレは全然ダメなんだ」なんて絶望感に浸ってしまう。

そんな自信と絶望の狭間で揺れる30代を、いったいどういう心構えですごしていけばよいのだろうか。以下に、本誌を基に先人たちの言葉から考えてみよう。なお、本書は致知出版社様から献本いただきました。どうもありがとうございます。


本誌は、「たったひとつしかない人生をどう生きるか」をテーマに、偉大な先人たちの言葉をインタビューや対談形式で紹介する内容である。京セラの会長を勤めJALの再建にも関わっている稲盛和夫氏をはじめ、終戦後もルバング島のジャングルで30年間も戦い続け、最後の日本兵として知られた小野田氏や「塩狩峠」の著者である三浦綾子氏など、偉大な先人たち10名の壮絶な人生と生き方が紹介されている。「本書は致知出版社が33年間蓄積してきた人間学の決定版」というだけあって、先人たちの深く重い言葉が目立つ。特に想像を絶するような苦境を経験した人の言葉は、私のような30代の若造の胸にも深く突き刺さる。人生について悩むことがある人は、本書をよむとひとつの道しるべが得られるかもしれない。

現在、「人間学入門」の発刊を記念して座右の銘を募集しているので(応募期間は2011年12月1日から2012年2月29日まで)、悩める30代のための座右の銘を本誌を基に勝手に考えてみた。まずは先人たちの言葉を3つのポイントでまとめてみる。


エラい人は驚くほど謙虚である



エラい人は、どんなに身分が高くなっても驚くほど謙虚である。目上の人だけでなく、目下の人に対してもその姿勢は崩さない。この傾向は特に経営者に強く現れるような印象をうける。そして、そんな謙虚な姿勢に私も憧れる。例えば、大和ハウスグループを一代で築き上げた石橋オーナーの言動が紹介されている。

石橋オーナーが視察に来られたことがあります。一緒に地元の有力者に挨拶周りをしたんですが、知事のところで名刺交換をすると、膝頭を拝むように深々とお辞儀をされるんです。市長や電電公社の支社長の時もそうやし、窓口の課長、係長に対しても同じように挨拶をされる。(p.53)

石橋オーナーだけでなく、偉大な経営者である稲盛会長も謙虚な姿勢を忘れないよう注意してきたようだ。あの偉大な稲盛会長ですら、京セラを大阪証券取引所の二部上場にまで成長させたころ、まわりからチヤホヤされて知らず知らずのうちに増長していってしまったらしい。そんなとき、自分を戒める意味で作成した社内標語が、

「謙虚にして驕(おご)らず、さらに努力を」(p.48)

である。そんな稲森会長に多大なる影響を与えたのが論語の解説等で有名な安岡先生のようだ。その先生の言葉を一部、紹介してみよう。

自分にはおまえの運命がいかなるものであるかはわからない。しかしもしおまえが大変な出世をして有名になるようなことになったとしても、その時はまだ昔の志を得ぬ時、落魄していた時の気持ちを持ち続けて、決していい気になってはいけない。(p.41)

30代になってちょっとくらい仕事ができるようになったからといって、増長したり、それに満足したりせずに、そして周りの人に感謝しながら、さらなる成長を続けて行きたい。とはいっても、なかなか容易にできることではない。そこで大切になってくることが次に示す志である。


エラい人は高い志をもっている



どんなにエラい人でも、ときには悩み、ヤル気がなくなることもきっとあるはずだ。でも、それでも前へと進んでいかなければならない。そんな促進力にとって大切なことが高い志である。稲盛会長は次のようにいう。

私たちそれぞれが生まれてきた人生の目的は、世のため人のために尽くすことです。(中略)。世のため人のために尽くそうとすることによって、自分の運命を変えていくことができると思います。同時に自分だけよければいい、という利己の心を離れて、他人の幸せを願うという利他の心になる。(p.42)

本誌でも述べられていたのだけれども、「世のため人のために尽くす」といった大上段なことをいうと、インテリであればあるほどせせら笑う人が多いそうだ。ネットの世界でもときどき「中二病」だとか「廚二病」なんて言われたりする。そういった周りの言葉をいちいち気にしていたら、大義を成し遂げることはできないのだろう。人からどう思われるかを気にしているうちは、まだまだ半人前なのかもしれない。



エラい人は常に成長している



今さらいうまでもないかもしれないものの、エラい人がエラい理由は、どんなにツライときでも常に成長しているからである。自分の非力さを認め、謙虚な姿勢でどん欲に成長していくからこそ、エラいのだろう。本誌を読んで特にそのことを痛感したのが、最後の日本兵として知られる小野田氏ではなく、彼と対談した大塚氏の話である。

大塚氏もやはり若いときに戦争を体験している。彼は海軍に所属していて、頻繁に船に乗っていた。そして彼が二十歳くらいのころ事件が起きた。当時、東京大空襲があって敗戦色が濃厚になってきた。そんなとき、上海への移動が命じられ、彼の乗る船が佐世保湾を出発した。その途中、敵の潜水艦からの攻撃をうけ、乗っていた船がドッカーンと爆発し、船の半分が吹っ飛んだ。奇跡的に一命をとりとめた当時の大塚氏は、運良く近くに垂れ下がっていたワイヤーロープにしがみつき、必死に甲板に登っていこうとした。そのとき、何人もの他の連中が自分の足を掴んでくる。あまりに多くの人が掴もうとするものだから、その重さに耐えきれず自分も落ちそうになる。まさに太宰治の「蜘蛛の糸」状態である。このとき大塚氏はどうしたか。彼の言葉を引用してみよう。

私はね...、生きるためにその人たちを蹴落としたんですよ...。助かりたい、なんとか生きたいという思いで無我夢中でした。後から考えれば人殺しをしてしまったわけです。(p.101)

当時の大塚氏は二十歳そこらの若者である。それに加え、周りの人たちは戦争でどんどん死んでいく時代である。自分が二十歳のときに彼と同じ状況になったと考えると、やはり自分も他人を蹴落としてしまっただろう...。そのときは無我夢中でも、しばらくして心が落ち着いてくると、「自分はなんてことをしてしまったんだ、オレなんて生きていてもしょうがないのに...」と深い自己嫌悪に陥るに決まっている。私だったら、そんな状況から立ち直れるか自信はない。しかし、大塚氏はそこから立ち上がった。心に深い闇を持ちながらも、他人のせいにするわけでもなく。その強靭な精神は、彼が成長し続けたからこそ持ち得たのだと思う。

そういった強靭な精神を育むうえで、読書が役に立つと哲学者の森信三氏はいう。

読書の中心は結局「自分」というものを常に内省できる人間になるということでしょう。だから、私たちは平生読書を怠らぬことによって、常に自己に対する内観を深め、それによって真の正しい実践のできる人間になることが、何より肝要です。(p.17)

本を読んでいるときは分からなくても、読書し続けるとだんだんこの言葉を深く理解できるような気がする。



ということで、以上みてきたように、本誌を3つのポイントでまとめてみた。長々と書いてきたものの、結局ひと言でいってしまえば、稲盛会長がいうように「謙虚にして驕(おご)らず、さらに努力を」(p.48)へと行き着いてしまう。とはいえ、謙虚に生きよう、と思っても、じゃあ実際に「謙虚に生きる」って具体的にどういうこと?と考えてしまう。いま問題となっているのは、30代になってちょっと仕事ができるようになっただけで「自分はスゴい」と勘違いすることである。もし「自分は思った以上にショボい」と日々痛感できれば、「ショボいのだからもっと努力しないと」という気持ちが沸いてくるのではなかろうか。そして、まだ自分がうまく習得できていないスキルに注目することで、自分のショボさを認識できるのではなかろうか。人様のお役に立つには、まだまだ自分はショボい。ショボいからこそもっと成長して、人様のお役に立てる仕事をしていかないといけないのだはなかろうか。それが私を含めた今の30代に求められていることではなかろうか。自分はまだまだ未熟である、それを噛み締めてこそ、さらなる成長ができるのではなかろうか。今の私に答えは分からない。それでも、この先は、謙虚に努力を続ける人生を歩んで行きたい。そういう想いを込めて座右の銘を書いてみた。

30代にむけた座右の銘:己の未熟さを噛み締める


あなたも、本誌を読んで自分だけの座右の銘を考えてみてはどうだろうか(応募先はこちら)。結構、楽しいですよ。よければコメント欄に書いて、私にも聞かせてください。待ってます。

人間学入門
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目次
「人間学入門」− 発刊に寄せて
先達に学ぶ
 森真三 我が言葉の人間学
 坂村真民 念ずれば花ひらく
 「四書五経」って何?
経営者魂に触れる
 稲森和夫 事業を興す その動機善なりや 私心なかりしか
 樋口武男 我が熱湯経営の歩み
 経営者たちの魂の言葉集
人間を磨く道
 渡部昇一 ヒルティに学んだ心術が支えとなった
 三浦綾子 希望は失望に終わることはない
 達人たちの金言集
極限の運命を生きる
 小野田寛郎 x 大塚初重
 極限の運命を生きた人たちの名言集
人間学対談 新井正明 x 豊田良平



定期購読の申し込みは、致知出版社ホームページからどうぞ。


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