2011年12月28日

それでもあなたは負け犬の選択をしてしまう:フレーミング 「自分の経済学」で幸福を切りとる (タイラー・コーエン)


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今年も残すところあとわずか。この時期に町で買い物をすると福引きの抽選券をもらえることがよくある。さて、とある町で買い物をした lhflux 君。抽選券をもらって福引きをすることになった。ここの福引き所では、ちょっと変わった催し物が開催されていて、2種類の福引きがあった。もし、次のような福引きがあったなら、あなたらはどちらを選ぶ?

1. 最初に千円を支払うくじ引きで、アタリがでたら1万円がもらえるが、ハズレがでたら何ももらえない。当たる確率は50%。
2. 無料のくじ引きで1等から6等までの景品が確実にもらえる。1等の景品は3Dテレビ、6等がテッシュ。当たる確率は、1等が0.1%未満、6等が85%。

もし、あなたが迷わず 1 を選んだのなら、続きを読まなくてもいいかもしれない。つまり、それは勝ち組の選択だから。もしそうでなければ、「フレーミング効果」を知っておくと、最終的に勝ち組の選択ができるようになるかもしれない。以下に、本書を基にフレーミング効果の概要とその応用例を紹介してみる。


本書は、なんといっていいか悩んでしまうような不思議な本である。タイトルに「フレーミング」とあるように、行動経済学でいうところのフレーミング効果についての説明と応用がたしかに述べられている。そして、インターネットの発達によって莫大な情報にさらされている現在の状況に対して、自閉症者の利点をうまいこと用いていくことがポイントになるのではないか、という著者の意見が述べられている。けれども、本書を読んでいると、こういった内容を一連のストーリーで語るというよりは、森の中のけもの道を頼りにして先へと進むように、なんだか分かるような分からないような感覚で話が展開されていく。そして本書を読み終わると、世間の人々から差別的な目でみられがちな自閉症者がいかにすばらしい能力を持っているかを訴えた内容で、フレーミング効果について何か言ってたかな、という感想を私は持ってしまった。そうかとおもいきや、後で付箋の貼ってあった箇所を読み返していくと、たしかにフレーミング効果についての解説と役に立ちそうな応用例が書いてあるのだ。単に私の読解力に問題があるのかもしれないし、本書がただ難解なだけ、といってしまえばそうなのかもしれない。

ここでは冒頭で紹介した「フレーミング効果」だけに話をしぼって私の理解で3つにまとめてみよう。

フレーミング効果



本書では「フレーミング効果」について次のような解説が書かれている。

行動経済学者らは、人間を「フレーミング効果」に影響されるものだと表現することがある。フレーミング効果とは、選択肢の提示が人の選択を左右することだ。たとえば、まったく同じ機会でも、何かを獲得する機会として示されると、何かを失う機会として示された場合よりも、無難な選択をしがちになる。また、メニューにとんでもなく高カロリーなものが載っていると(それは注文しない)、あとでデザートを頼むのがそれほど後ろめたくなくなる。(p.14)

ここで冒頭で紹介した「福引き」をもういちど振り返ってみよう。千円を払うと50%の確率で1万円がもらえるということは、期待値が5千円である。これはどういうことかというと、1万円払ってくじを10回やれば、よっぽど運が悪くない限り5万円が返ってくる計算になる。投資リターンに換算すると500%という脅威の数字だ。ただし、1〜2回の挑戦ならお金を損する可能性も十分にある。フレーミング効果の説明によれば、冒頭で示した1の福引きのように数千円を損するかもしれない、という何かを失う機会を示されると、人はそれを選ばずに、2で示したような無料の福引きでティッシュに甘んじるという無難な選択をしがちになることを意味している。

この例から、「フレーミング効果」というと、なんとなく悪い印象をもつかもしれない。しかし、著者はこの「フレーミング効果」をうまく利用すれば、自分だけの経済を創造し、人生をもっと楽しくできると次のように説く。

普通、フレーミング効果は避けるべきものだと思い込まれている。たしかに多くのフレーミング効果は非合理的なものだが、この効果は生活に気合いを入れるのに役立つ。われわれは時間と労力を費やして物事を正しくフレーミングし、その事柄をもっと楽しめるように、あるいはそれからもっと学べるようにしている。新しいジャガーを買う余裕もなく、ふところの危機に備えて家に引きこもっているようなときに、それをうまくいくようにしてくれるのが適切なフレーミングなのだ。頭を上手に整理すれば、自分自身のフレームを作りだすことができ、それによって自分だけの経済を創造できる。(p.14)

次にフレーミング効果の有効利用と自分の経済を創造することについてまとめてみよう。

フレーミング効果の有効利用



人は多くの選択肢から何かを選ぼうとするとき、フレーミング効果をいつも正しく選択するとは限らない(p.103)。このことを認識すれば、自らをフレーミング効果によっていい方向へダマすこともできる。

例えば、英語の勉強を例にしてみる。英語の勉強では、自分の興味あることを題材にするといい、とよく言われる。そこで最近話題の Steve Jobs の洋書とオーディオブックを使って勉強しようと思い立ったとしよう。iPhone や Mac ユーザーならジョブスのスゴさは知っているし、ストーリーも面白いから飽きずに勉強が続けられそうだ、と思惑が働く。そこでいざ購入しようとアマゾンでチェックしてみた。

・Steve Jobs 洋書 (2,131円) + オーディオCD (3,246円) ;5,377円


アマゾンでは、おおよそ5,500円の経費がかかることが判明する。すると「最近、忘年会が多くて今月は金欠なんだよなぁ」なんて感情がふと沸いてくる。それに加え、「今年はボーナスも少なかったんだよなぁ」と追い打ちをかける。「そういえば、アレも買わないといけないんだった」と急に思いつく。その結果、最後のクリックが押せず、結局、英語の勉強自体をあきらめてしまう...。

しかし、ここで選択肢が影響を及ぼすというフレーミング効果を使ってみよう。そのために、他の英語教材と値段を比べてみた。

・Steve Jobs 洋書 (2,131円) + オーディオCD (3,246円) ;おおよそ 5,500円


・パソコン英会話ソフト、ロゼッタストーン:49,750円


・英会話スクール AEON の「ビジネスに役立つ基本+実践英会話コース」:336,420円


洋書+オーディオブックが 5,500円 なのに対し、パソコンソフトが5万円、さらに英会話教室なら30万円はかかる。こうしてみると、英語の勉強のために、パソコンソフトや英会話教室へ出費して失敗でもしたら目も当てられない。これらに比べれば、洋書+オーディオブックへの出費がぜんぜん高くないことに気付くし、失敗したとしてもたいしたことはないだろう。こうやってフレーミング効果を利用すると、自分にとってプラスと働く投資を行うことができるかもしれない。

また、逆の見方をすることもできる。人は、強い自制心や多くの犠牲を必要とした経験ほど、楽しさや価値をより大きく感じる(p.106)、と言われている。そのため30万円以上もかかる英会話スクールへいざ通うとなると、相当の心構えが必要だ。これがモチベーションとなって、「今日はなんだか行くのが面倒だけど、こんなに高い費用がかかっているんだからいかないと損だよなぁ」なんて思うこともあるだろう。フレーミング効果にはこういった心理的な側面が強く働いているようだ。


フレーミング効果で自分の経済を創造する



こうしたフレーミング効果を上手に使うことで、現在の不景気のように、将来の見通しが暗いときでも、自分の経済を創造することで人生が楽しくなると著者は訴える。そして、自分の経済を創造することは、現在のテクノロジーが最も得意とするところである。というのも、インターネットの到来でだれもが膨大な情報に日々さらされている。そんな莫大な情報を自分が使いやすい形にしてくれるのも、現在のテクノロジーでは可能である。著者はそのことを次のように、なんとなく分かるような、かといってイマイチ分からないような感じで説明している。ウェブ上の新機軸の裏にある考え方とは、「ますます拡大する、騒々しく圧倒的な混乱、すなわち豊かで華々しい現代の情報に着目し、それに何らかの局所的な一貫性をもたせることで、情報を使いやすい形に変える」ということだ(p.21)。

自分の経済を創造するとき、アクセスの難易度で人が求めるものも変化する。アクセスが簡単であれば、われわれは短く、快く、小さいものを好み、アクセスが困難であれば、大規模な制作物や派手なもの、傑作などを求める傾向がある。こうしたメカニズムを通じて、アクセスのコストは人間の内面の活動に影響する。われわれの手に入る文化は、たいてい「小さなピース」と「大きなピース」の二種類からなる。アクセス・コストが高いと、小さなピースははじき出され−選ぶに値しないのだ−結果的に大きなピースに目が向けられる。アクセス・コストが低ければ、大小さまざまなピースが選択可能になるが、どちらかといえば小さいピースのほうが好まれる (p.59)。 ウェブというのはまさにアクセス・コストが低いわけで、ウェブが大衆向けというよりはニッチ層に特化した「小さいピース」の集合体と捉えることができ、この「小さなピース」の集合体がこれからの文化の中心を担っていくと著者は推察している。著者の言葉を用いると次のようになる。

人は、文化を自分で組み合わせた小さなピースの集まりとして捉え、毎日を魅力的な形に織り上げ、その作業に専心している。これは、豊かで満ち足りた結婚生活を実現できることによく似ている。この変化によって、われわれはいっそう豊かになったが、このことは、美しさ、スリル、学習などの価値が、人の心の中で創造される傾向が強まっているという、より大きな趨勢の一部でもあるのだ。(p.84)

莫大な情報を自分の使いやすい形にかえるテクノロジーは、コミュニケーション手段の選択にかかっている。コミュニケーション手段をどう決定するかは、あなたの人生で実現する、最高に豊かな経済を創造するにあたっての、基本的な選択なのである(p.117)。具体的なコミュニケーションツールを挙げると、E-mailやtwitter、facebook、ブログ、mixi、google+ などなど、数多くのものがある。こういったツールのうち、どれを使うかは個人の自由であり、また、現代だからこそできるコミュニケーション手段なのであろう。そういう時代で必要なスキルについて、著者は次のようにいう。

現代の文化的教養とは、ルーベンスの絵画に描かれたシンボルをすべて「読み解く」ことができるかどうかではなく、iPhone などのウェブ関連の技術を使いこなせるかどうかなのだ。iPhone をうまく使えば、ルーベンスに関するウェブサイトにもアクセスできる。ここで問われるのは、古典作品の知識の有無ではなく、自分なりに集めた文化の小さなピースを組み合わせる力である。この視点からみれば、今どきの若者はじつに文化的教養が高く、それどころか文化を主導・創造していることも非情に多い。(p.79)

このように、インターネット上にあふれかえる「小さなピース」を、現代のコミュニケーションツールをうまく利用して自分用に組み合わせていくことで、「自分の経済を創造する」ことができるのだそうだ。

さらに、こういった「自分の経済の創造」を突き詰めていくと、今後、文明はどういった方向へと進むのか、ということまで著者は推察している。ちょっと難しいかもしれないけれども、以下に紹介してみる。ポイントは、「今後の文明はどんどん小さくなった方が情報の伝達という意味で効率的になるため、文明の痕跡自体は目立たなくなっていくだろう」ということだ。

高度な文明は、みずからをより大きく目立つ存在にするよりも、むしろ小さく目立たないものにし、それによって強くなろうとするかもしれない。そうした文明は、その知恵とエネルギーを、内面を掘り下げ、精神生活を探求することに費やすだろう。結局、比較的大規模で拡大志向の文明ほど、より高度な競争相手と衝突したり、彼らの標的になったりするものだ。...(中略)... 情報とエネルギーをきわめて効率的に活用し、ピンの頭や、それより小さな空間に収まるようになった「文明」を考えてみてはどうだろうか。その場合、彼らの存在を示す、目に見える痕跡の発見は期待できないだろう。(p.282)


以上みてきたように、本書は行動経済学、とりわけ「フレーミング効果」に焦点をあてて、景気後退期が訪れたとき、われわれは降参するかわりに、自分自身を力づけ、生活を改善するために、何ができるだろうか(p.2)、という問いに答えようとした内容である。しかし、上でも述べたように、「自閉症」に関する意見や知識も多くでてきて、パッと読んだだけですべての内容を理解するのがなかなか難しくもあった。私は「自閉症というのは単にその人のひとつの個性だ」と捉えているので、周りにそういう人がいても、そして仮に自分がそうだったとしてもあまり気にしていない。しかし、「自閉症者」と診断された人は、世間からいかにも病気のように捉えられ、差別的な扱いをうけていることも本書を読んで知った。自閉症に苦しんでいる人や、自閉症っぽい人が身の回りにいる場合は、本書を読むときっと勇気づけられるだろう。

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------ lhfluxの評価 ------
総得点 (15点満点) : 11 点
内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点
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目次
はじめに
第1章 風変わりな思考の未来
第2章 知られざる創造力
第3章 現代文化は、その輝かしい面でなぜ結婚に似ているのか
第4章 インスタント・メッセンジャー、携帯電話、フェイスブック
第5章 救済者としての仏陀とシャーマンとしての教授
第6章 「物語」の新しい経済
第7章 ヒーロー
第8章 美は思いがけないもの
第9章 自閉症者の経済学
第10章 世界はどこへ向かうのか


【本書にあった行動経済学の視点】
・人は、強い自制心や多くの犠牲を必要とした経験ほど、楽しさや価値をより大きく感じる(p.106)

・人は、実際よりも頻繁に、自分を善人だと思いがちである。われわれは降参すべきときに戦い、考え方を変えるべきときに武器に固執し、自分が問題の解決法ではなく、問題の一部である場合もあることを理解していない。(p.242)

・人は、自分の意見が、他者の同じくらい鋭い意見と衝突したとき、自分の意見を合理的に正当化できる以上に重視しがちだ。自分の主張を途中でやめて、あいつのほうが正しかったと言いながら去っていく人を、あなたは何人ご存知だろうか。(p.243)

・行動経済学ではなじみ深い、もうひとつのよく知られている偏見は、「授かり効果」といわれるものである。これは、人々はすでに所有しているものや、自分に所属すると認識しているものを過大評価しがちである、ということだ。(p.245)



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