2011年12月09日

凡人がプロフェッショナルになるための3つのステップ:『プロフェッショナルを演じる仕事術 (若林 計志)』


It's all business [i] / paolo.verde


あなたは天才ですか?それとも凡人ですか?

もし、あなたが天才ならこの書評も本書も読む必要はない。しかし、もしあなたが凡人だと自認していて、さらに「プロフェッショナル」という響きに魅力を感じたなら、本書が参考になるかもしれない。というのも、本書によれば、そういう人は多くのことをよく吸収し、学習を通じて「変わる人」なのだそうだ。大前研一氏が学長として知られるビジネス・ブレークスルー大学大学院にて事務局長を努め、多くの社会人学生をみてきた著者は次のようにいう。

これまでビジネススクールの運営に関わってきた経験から、社会人学生の中で学習を通じて「変わる人」と、ほとんど「変わらない人」の共通項が見えてきました。「変わらない人」は、よい意味でも悪い意味でも、やや冷めた目で見ながら勉強を要領よくこなそうとします。そしてプライドが高いだけに、自分の考えとは違う価値観や自分より優れたものを簡単には受け入れようとはしません。(p.154)

一方、「変わる人」はどんどん成長し、気がつけば「変わらない人」と圧倒的な差をつけ、プロフェッショナルな仕事術をマスターしている。いったいどうしてそんなことになってしまうのだろうか。「変わる人」はどうやって成長し、プロフェッショナルとなるのだろうか。以下に、プロフェッショナルな仕事術をマスターするための3つのステップを紹介してみる。

なお、本書はレビュープラス様より、献本いただきました。いつもどうもありがとうございます。


本書は、普通のビジネスパーソンがプロフェッショナルな仕事術を身につけるための指南書である。仕事術を紹介するときには、フレームワークといった高度な専門用語が飛び出すも、平易な文章と具体的な例をうまく使って分かりやすくまとめられている。全体の主張もはっきりとしていて、プロフェッショナルと呼ばれるビジネスパーソンから如何にしてその仕事術を盗み取り、自分もプロフェッショナルの仲間入りを目指すか、といった一環のプロセスがしっかりと描かれている。以下に詳しく示すように、プロフェッショナルとなるための方法も「役割を演じる」といった、極めてシンプルな手法であり、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといったRPG(ロールプレイングゲーム)に慣れ親しんだ私のような30代世代にとっては、比較的受け入れやすい方法だと思う。以下にプロフェッショナルとなるための3つのステップをみていこう。


Step 1: モチベーションを高く維持する



成功した経営者や、歴史に名を残した人々の特徴として、「もともと何かを成し遂げたいというモチベーションが高い」(p.3)ことが挙げられる。このモチベーションの高さと密接に関係するのが「ストーリー」である。ドラクエやファイナルファンタジー(FF)といったRPGを考えてみよう。こういったRPGでは、「悪の組織を倒す」とか、「世界平和をもたらす」といったような壮大なゴールがあり、そのゴールを目指してストーリーが展開されていく。しかし、いきなりその最終ゴールに到達できるわけではなく、目の前に展開されるちょっとした問題を解決しながら、その過程を通じて、一歩ずつレベルアップし、強くなりながら成長していく。そうやって成長を続けて、いよいよ最後のボスと対峙できるレベルにまで到達すると、最終ゴールである最後の戦いが繰り広げられる。こういった一連のゲームをするとき、ストーリーが面白ければ面白いほど、ゲームを続けるモチベーションも維持され、どんなに長くても難なく最後までやりきることができる。これはなにもゲームに限らず、仕事においても最終ゴールへと導く面白いストーリーを描く事さえできれば、高いモチベーションを維持して仕事に取り組むことができる、と著者は次のようにいう。

「勉強ができない生徒」と「できる生徒」の差にもストーリーが大きく関わっています。教室で習っている分数や面積の計算が、将来ロボットを作ったり、自動車を設計したりする事に役立つ事が分かれば、子どもの勉強意欲はきっと劇的に変わるはずです。なぜなら自分が今勉強している事の意味付けが分かるからです。(p.56)

仕事において良いストーリーを描くには、ロールモデルとなりうる人物を手本にするといいらしい。ソフトバンクの孫正義氏やユニクロの柳井氏は日本マクドナルドを急成長させた藤田田氏がロールモデルとなったそうだ。ロールモデルとなりうる人はどこにでもいて、例えば歴史上の人物や、伝説といわれたような経営者、もしくは身近で尊敬できる人でもよい。そういった人を勝手に「師匠」と設定するのである。それがプロフェッショナルへと続くまずはじめの一歩となる。


Step 2: とにかくマネをする



自分の「師匠」が決まったら、次にすることは、ひたすらそれをマネることである。冒頭では「変われない人」を紹介した。一方で「変わる人」もしくはプロフェッショナルとよばれるような人は、躊躇せずに他人のよいところをマネする。著者はそれを次のようにいう。

「変わる人」はどんな知識でもスポンジのように吸収します。「これは違う」「私ならそうしない」と思う事でも、一旦飲み込んで咀嚼しようとします。自分の方が正しいなら、"成功した人"より自分の方が成功していなければならないのに、現実は違うという事実をよく分かっているからです。だからこそ自分より優れた能力を持っている人と争おうとせず、そこから学ぶ懐の深さを持っています。(p.155)

言葉でいうのは簡単でも、実践するとなると難しい。本書では、次のようにいう。人は他人にアドバイスを求められると、十中八九の確率で「自分のような考え方・生き方が一番よい」と言います。(p.148)つまり、自分の方が正しいと思ってしまうばっかりに、素直に他人の意見をすんなりと受け入れることが難しいのである。しかし、自分もプロフェッショナルになると決意するならば、変なプライドはすべて捨てて、他人の意見も素直に受け入れなければならない。この段階をクリアしないと、いつになっても凡人は凡人のまま終わるのであろう。私も日頃から胆に命じておきたい。

他人の優れた意見を素直に受け入れられない場合は、コンプレックスに原因があったりするようだ。というのも、コンプレックスが強い人ほど、自分より優れたものや、自分が理解できない事に直面すると、そこから学ぼうとするより、否定しようとする気持ちが無意識に働いてしまうから(p.144)と著者はいう。厄介なことに、そんなコンプレックスを克服する特効薬はなく、地道な日々の努力が必要である。著者はこういう。コンプレックスを解消する方法は、小さな挫折と、それを乗り越える経験を繰り返す以外にありません。それによって、自分自身をアップデートさせながら、少々負けても簡単に折れない心(レジリエンス)ができます。(p.149)プロフェッショナルと呼ばれる人々は、一見、華やかなようにみえるけれども、実際には日々の地味な努力が実を結んだだけなのかもしれない。

素直な心で「師匠」の仕事術を徹底的にマネし、そのすべてを受け入れることができたら、いよいよ最後のステップへと続く。


Step 3: 自分なりにアレンジする



この最終段階に至までには相当な努力が必要だろう。もし、苦心の末、なんとか師匠と同じスキルを身につけることに成功したとしたら、最後の仕上げが必要である。その仕上げとは、師匠を越えることである。著者は岡本太郎氏の次の言葉を引用する。

「師匠は尊敬し、学ぶべき対象であると同時に、いずれは乗り越えるべき存在である」(p.224)

つまり、最後のステップは師匠から受け継いだ、もしくは盗み取ったスキルを自分なりにアレンジし、師匠を越えなければならない。むしろ、師匠を越えることができてこそ、師匠の技をすべて習得したといえるのかもしれない。

私にとってのなによりの「師匠」は、本の著者である。本を読んで著者の言いたい事を理解し、なんとかそのスキルを習得するよう努力する。ときどき、著者の考えが具体的な実体験と共に頭に沸いてきて、著者と一体化したようななんとも楽しい感覚を感じるときがある。そういう感覚が師匠から学ぶということなのかもしれない。とはいえ本書によれば、スキルをただ習得しただけでは不十分で、それを自分なりにアレンジして初めてその本を卒業できたことになる。当然、その道は険しく困難である。でもプロフェッショナルとなるためには、そういう困難な道を乗り越えていかないといけない。

自分は天才だと思っている人や、凡人のままでいたい人はそれでもいい。しかし、たとえ今はまだただの凡人だとしても、いずれはプロフェッショナルな仕事をしたいと思う人は、まず本書を読んでみてはどうだろうか。そんなアナタこそ「変わる人」なのだから。


プロフェッショナルを演じる仕事術 (PHPビジネス新書)
若林 計志
PHP研究所
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目次
第 I 部 ストーリーが人を動かす
 第1章 取調室でカツ丼を食べる謎
 第2章 ストーリーはどこからやってくるか
 第3章 プロフェッショナルのスゴさを「見える化」する
 第4章 仕事をゲームに変える方法
第 II 部 「プロフェッショナル」と「自分」をシンクロさせる
 第5章 「負ける技術」を身につける
 第6章 トイレを磨くと儲かるか
 第7章 プロフェッショナルからの正しい学び方




【本書で気になったコトバ】
リスクを取って挑戦し、経験を重ねるほど、強くなれる。これはどんな世界にでも共通する原理原則です。しかし社会人になると、負ける事を恐れるばかりに、勝負を避ける事の方が多くなります。(p.165)

人のやる気を研究する「欲求理論」で知られるハーバード大学のデビッド・マクレランド博士は、目標達成率が50%ぐらいの事に取り組むときが、人のモチベーションが最も高くなる事を心理実験を通じて証明しました。完全に運まかせではなく、努力と才能次第で半分ぐらい勝てるゲームが一番熱中しやすいのです。(p.151)


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posted by lhflux at 18:32| Comment(0) | TrackBack(2) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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