2011年11月19日

書評ブログに経営戦略を適用したら、こうなった:『経営戦略立案シナリオ (佐藤 義典)』

Strategy
Strategy / stefan.erschwendner


「君のブログには戦略がないんだよ...」

そういわれて、ブログの運営者は反論できるだろうか。書評ブログは別に戦略なんてなくてもいいんだ!と反論したくなるかもしれない。でもそう言って何も努力しなくていいのだろうか。

残念ながら、現時点でこのブログの戦略もあいまいである。私もこれまでいろんな本を読んで、何度か戦略を考え、実行してきたようなつもりでいるものの、それでも自分の中で「これぞ戦略」と胸を張っていえるものがない。「このブログの戦略」というと、なんとなく、心の中にモヤモヤとした状態である。というのも、戦略といえば「差別化が大切だ」といったり、「顧客の視点を持て!」と言われたり、「ポジショニング」だの「4P」だの「マーケティングがすべて」だの、いろんな人がいろんな理論を提案していて、私にはどれもイマイチ使いきることができなかった。

そこで本書の登場である。以下に、本書を基にしたこのブログの戦略についてまとめてみた。ちょっと長いので、経営戦略に興味のない人は続きを読むのをやめた方がよさそうです。


本書は、経営者が経営戦略を実戦するための手引書である。経営戦略を理論として理解することではなく、経営戦略を「道具」として使うためにどうすればよいかを説いた内容で、読んで理解しようというよりも、自社の経営ではどうやって経営戦略を使えばよいか、に焦点があたっている。

数学に例えてみると分かりやすいかもしれない。

例えば中学校で「三平方の定理」といった公式がある。直角三角形の2辺の長さが分かれば、残りの1辺の長さがわかる公式である。この公式がどのように求まったかを説明することが、いわゆる理論の構築にあたる。一方で、この公式の理論はよくわからなくても、それを事実と認識して、この公式を利用することで距離や面積を求めることができる。本書はこの後者に相当しており、理論の内容についてはあまり深入りせずに、その理論をどうやって実際の経営戦略に落とし込んで使えるようになるかを解説してくれる。なので、本書で記された経営戦略を、経営者が自社の運営に使うことができるし、私のようなブロガーが自分のブログに適用することもできる。ここでは、本書を基に「おでこのめがねで読書レビュー」の経営戦略について考えてみた。

本書が提案する経営戦略は、5つの要素からなっていて、著者は「戦略BASiCS」と呼んでいる。5つの要素とは、

・戦場型(Battlefield:戦場・市場を選び、勝てる市場で戦え!)
・独自資源型(Asset:他社に真似できない資源を蓄積せよ!)
・差別化型(Strength:強みのある優れた商品・サービスを売れ!)
・顧客型(Customer:顧客ターゲットの視点を持ち、顧客の気持ちになれ!)
・メッセージ型(Selling Message:わかりやすい、魅力的な売り方・売り文句を作れ!)

の5つである。これら5要素が独立しているというよりは、お互いが密接に関係してひとつの戦略を形作っている。どの要素からはじめても最終的にひとつの戦略に帰着する。なので、自分にとってやりやすい要素からはじめればよい。私の場合、いちばんやりやすい要素が差別化型であったため、ここでは差別化型から紹介していこう。

差別化戦略は、主に3つの軸で表現される。それらは、手軽軸、商品軸、密着軸である。手軽軸は、「早い、安い、便利」がウリで、マクドナルドのようなチェーン店が展開するように、大量仕入れで低価格路線を主に展開する。商品軸は、「最高・最新の商品・サービスの品質」がウリで、ブランド展開や最高のサービスを目指す。密着軸は、「自分を知り、自分だけのニーズに応えてくれる」ことがウリで、自分向けにカスタマイズされた商品や、「いつものヤツ」の一言で商品がでてくるような融通の効くサービスを提供する。以前に紹介した「売れる会社のすごい仕組み」はこの密着軸路線でストーリーを展開していた。

この差別化戦略をいろいろな書評ブログに適用してみると、次のように分けることができそうだ。

手軽軸:更新頻度が高く、文章も要点だけをコンパクトにまとめている。多読系。
マインドマップ的読書感想文
404 Blog Not Found
「継続は力なり」を実践している書評
本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館]

商品軸:更新頻度が少ないものの、文章が長く深い内容を目指す。精読系。
知磨き倶楽部(FCブログ)

密着軸:コメント欄が充実し、読者と積極的にコミュニケーションをはかる。個性派。
【営業のコトバ屋】本の抜粋書評使えるコトバをあなたに!
大森陽介の「成功へのアウトプット!」
本読みな暮らし

そして、私の「おでこのめがねで読書レビュー」は商品軸に分類される。私の印象では、書評ブログを展開するときに、手軽軸は競争率が激しく、商品軸はわりかし手薄な気がする。


本書によれば、商品軸はさらに2つに分けることができて、最新技術型と最高品質型の2つがある。私の書評記事が現時点でどうかはとりあえずおいといて、私が目指すべき道としては、最高品質型になる。最高品質型については、本書で次のようにかかれていた。

 このタイプで、商品・サービスは素材・技術などを含めて、最高のものになる。最新技術型のようにサイクルを早く回すというよりは、良質なものを長く売り続けることのほうが多い。わかりやすい典型例が、「カバン戦場」でのエルメス、「ペン戦場」でのモンブランなどだ。
 製品は、素材を厳選し、最高級のものを使う。必然的に価値は最高レベルの高さになり、値引きもあまりせずに定価販売を狙う。(p.102)
 流通を絞ることは、最高品質型の差別化戦略としては定石だ。その結果、取り扱えない小売店も出るが、それでも割り切っている。小売店よりも顧客の支持が重要だということだろう。徹底的に「最高品質」で差別化しているのだ。(p.105)


これまでみてきた差別化型は戦略BASiCSのひとつの要素である「独自資源型」と密接に関係する。私が商品軸・最高品質型を目指すのも独自資源を基にしている。私の独自資源といえば、「科学者としての立場」であり、「論理的な文章の展開」があげられる。自分の文章を「論理的」だの「ロジカル」だの言うことに抵抗があるものの、それでも仕事ではロジカルな文章が常に求められているため、やはり私の独自資源といってもいいのではないだろうか。少なくとも、科学的な文章(曖昧さをなくし、伝えたいことを明確にし、読者に誤解を与えない文章)を心がけているために、現時点ではまだまだ冴えなくても、目指すべきゴールは「ロジカルな書評」となる。

これらをまとめると、このブログで扱うべき本は「内容の濃い最高品質の本」であり、それを「ロジカルに楽しく伝える」書評が独自資源を活かした結果となる。
するとこのブログの差別化ポイントは「内容の濃い本でもロジカルに楽しく伝える書評」となる。

次に私が考えた戦略BASiCSの要素は「メッセージ型」である。著者はマズロ−氏やアルダファー氏が唱える人間の欲求をもとに、次の3つの欲求に要約した。

・生存欲求:お金、健康、安全といった、生き続けたい肉体的な快楽
・社会欲求:家族、ステータスといった、他人との関係においてよく思われたい願望
・自己欲求:成長、内的喜びといった、他人とは無関係に自分の中で完結する欲求

この3つの欲求をよく考えてみた結果、私のブログで読者に満たして欲しい欲求は「自己欲求」になった。つまり、このブログの書評記事を読むことで、読者がいま読むべき本を見つけたり、読者のスキルアップにつなげてもらったり、読者の人生を豊かにするためのヒントを得てもらえる、そういう願いを込めて私は書評記事をアップしている。そのとき、興味ないことをイヤイヤながら勉強するのではなく、興味のあることを楽しみにながら学んで欲しいという想いも持っている。本書を読んで、そのことに気付いた。すると、このブログのメッセージは強みや独自資源とからめて「ロジカルな読書で楽しくスキルアップ」とか、「ロジカルな読書で人生を豊かに」といったところだろうか。

読者のどんな欲求を満たすか決めたあとは、戦略BASiCSの要素「顧客」を考えてみよう。本書では、顧客を絞る、もしくは、割り切ることが大切だと次のように説く。顧客を割り切るというと、「顧客を不平等に扱うなんて問題だ!」という意見が出てくることがある。しかし、その発想自体が問題である。何回もいうが、絞らなければ、絞ってきた競合に負ける。そして自分が売りたくない顧客や、自社が得意としない顧客に売ることは、非常にエネルギーを消費する(p.179)。

顧客を割り切る方法としては、求める価値によってセグメンテーションするベネフィットセグメンテーションが有効である。本書には次のような視点を紹介している。

@あなたの強みを重視するのは誰か?
Aあなたはどんな戦略をとり、誰を狙うのか?

このブログの場合、「メッセージ型」でみたように、楽しみながらスキルアップをしたい自己欲求を満たす価値を提供したいため、「楽しくスキルアップしたい読書好きな人」が顧客になりそうだ。ドラッカーを読んだとき、顧客を定義することがものすごく難しく感じたものの、このように差別化戦略からはじめると、比較的すんなり顧客を決めることができた。

さて、最後に残った戦略BASiCS要素の要素が「戦場」である。本書では、一番はじめに紹介されているものの、私にとっては一番苦手な要素のようだ。しかし、ここまでみてきた4つの要素を基にすれば、おのずと戦場が明らかになる。それが戦略BASiCSのすごいところだ。本書によれば、「戦場」は次のように説明されていた。

 顧客が「戦場」を決める。そして、戦場が決まる基準は、業種・業態などではなく「顧客にとっての価値」だ。これは本書を貫く主張であり、きわめて重要なことなので、もう一度いう。戦場を決める軸は、業種・業態ではなく、「顧客のベネフィット」なのだ。経営戦略とは、顧客にとっての価値という戦場で、それを競合よりもいかによりよく満たすかという戦いなのだ(p.55)。
 戦場を選ぶ際には、@どこで戦いたいかという経営者の意思と、A自社の強みが活きるかが基準となることは前に述べた。「どこで戦いたいか」というのは、「どのような価値を顧客に提供したいのか」ということなのだ(p.60)。


このブログの場合、顧客は「楽しくスキルアップをしたい読書好きな人」なので、「顧客のベネフィット」は「楽しいスキルアップ」である。スキルアップという視点に立てば、私の競合は「塾・学校」といったビジネススクールが競合になる。また、「読書をする時間」を奪うという視点に立てば、テレビ、パチンコ、競馬、ゲームといった娯楽が競合になる。この娯楽との競合は「楽しく」というテーマともかぶる。ということは、現時点でこのブログと競合し、私が選ぶべき戦場は「娯楽市場」となるのだろう。

ということで、私の書評ブログにおける戦略をまとめるとこうなる。

このブログの戦略BASiCS
戦場・競合:テレビ、ゲーム、パチンコ、競馬といった娯楽市場
独自資源:科学者としての立場、ロジカルな文章
差別化・強み:内容の濃い本でもロジカルに楽しく伝える書評
顧客セグメント:楽しくスキルアップしたい読書好きな人
メッセージ:ロジカルな読書で楽しくスキルアップ

戦略BASiCSの5要素のうち、どこからはじめても最後にいきつく戦略が同じになる点が、本書のいいところであろう。戦略が決まったら、次はそれを戦術にまで落とし込む必要がある。けれども、本書には戦術まで落とし込むことについてはあまり詳しく書かれていない。戦術をもっと詳しく知るには、著者の関連本が参考になりそうだ。ということで、またまた著者の関連本を買わないといけなそうですな。著者が編み出した、こういった仕組みには脱帽です。


経営戦略立案シナリオ (かんきビジネス道場)
佐藤 義典
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------ lhfluxの評価 ------
総得点 (15点満点) : 13 点
内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点
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目次
STEP 1 経営戦略論の本質をつかむ
STEP 2 Battlefield 戦うべき市場を決める
STEP 3 Asset & Strength 独自資源を育て強みを活かす
STEP 4 Customer すべてを顧客の「価値」に合わせる
STEP 5 Selling Message 「価値」を伝えるメッセージ
STEP 6 経営戦略統合フレームワーク


著者による本書のまとめサイト
経営戦略立案シナリオ 読者のページ


【おすすめの参考図書】
著者の佐藤氏が書き下ろした関連書籍を著者のことばと共に紹介します。

ドリルを売るには穴を売れ
マーケティング理論の読みやすい入門書。ヒロイン売多真子が「そーれ・しちりあーの」のコンセプト立ち上げに四苦八苦します。


売れる会社のすごい仕組み
戦略BASiCS、売上5原則、マインドフロー、プロダクトフローを小説風に紹介しています。


図解 実戦マーケティング戦略
戦略BASiCS、売上5原則、マインドフロー、プロダクトフローの理論説明をしています。増刷を十回以上重ねています。


白いネコは何をくれた?
戦略BASiCSを本書のような物語形式で書いています。物語を読みながらマーケティングの世界を理解したいという方におすすめです。


実戦マーケティング思考
マインドフローなどを使った、アイディア発想の具体的なやり方を解説しています。一貫性と具体性、定量と定性のサイクルなどを、「具体的に」どう活用するか、また私がどのようにこのような物語を生み出すのか、ということも少し解説しています。



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