2011年08月28日

金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント (ロバート・キヨサキ & シャロン・レクター)

「勉強しなさい。勉強して、テストでいい点をとりなさい。テストでいい点をとって、いい大学に入りなさい。いい大学に入って安定した職業につきなさい。そうすれば、お金をいっぱい稼げるようになって、お金に困らないから。」

そう言われて育った人は多いだろう。そうはっきりと言及しなくても、子供にそういう教育をしている人も多いのではないだろうか。しかし、果たしてそれは本当だろうか。

例えば日本では、「勉強して医者になれ」という人が多い。私の周りでも、そういうことを言う人が結構いるし、ご丁寧にも私の息子に医者を勧めるオトナまでいる。たしかに「医者」の知り合いに話を聞くと、給料が高いことは事実である。しかし、歯医者や眼科医は別だとしても、医者の花形(?)と言われている外科医の激務さには驚かされる。一人前の外科医となるために症例数を稼がねばならず、日夜激務に追われながら数多くのオペに立ち会う。その結果、休息の時間がほとんどない。また、たまに取った休息も普段のストレス発散のためにかなり景気良くお金を使う。結果的にお金がほとんど手元に残っておらず、働かないと1ヶ月も経たないうちに生活費を支払うことができなくなってしまう。中には患者に訴訟を起こされ、さらには家族からも見放され、精神的にも経済的にも不幸になる医者がいる。

なにも医者に限らず現在従業員として働いている人で、老後の心配が全くなく未来は明るいと感じている人はいったいどれくらいいるのだろうか。少なくとも私のような20代から30代の人々が60歳になるころには、すでに「定年退職」なんてコトバは死語になっているかもしれず、仮に国から「年金」をもらったとしても、その年金だけで生活できるほどたくさん貰えるとも思えない。それだけでなく、40代になれば子供の養育費に加えて親の介護費までもが重くのしかかる。一生懸命働いてお金を稼いだとしても、その分、所得税も高くなり一向に家計に回復の兆しが見えてこない。考えれば考えるほど将来の経済状態は暗くなるばかりなので日々の激務にまかせて目の前の仕事に没頭してしまう。そこから脱却する唯一の手段として宝くじを買って高額当選することを日々祈る....。

そんな生活に満足している人は本書を読む必要がないだろう。しかし、そんな生活から脱却したいと深く望む人は本書を手にする価値がある。以下に、経済的な自由を手に入れるための本書で紹介されている内容を簡単にまとめてみる。


本書は、金持ち父さん貧乏父さんの続編にあたる、経済的自由を手に入れるための啓蒙書である。経済的自由というのは、お金がたくさんある状態ではなく、利子や配当といった働かないでもらえる月々の不労所得の額が生活費を含めた総支出の額よりも上回った状態を指す。つまり、現職がクビになって翌日から給与所得が無くなったとしても不労所得があるために今の生活をずっと維持し続けることが可能な状態である。そんなことできるのか?と疑問に思う人もいるかもしれない。それは無理もない。なぜなら、学校では経済的自由になる方法を全く教えてくれないのだから。本書は、そんな学校では教えてくれない経済的自由を手に入れるための心構えを説く。お金について全くの素人よりも、多少お金について学び初心者から脱却したい人を対象に本書は書かれている印象をうけた。例えば企業の財務諸表くらいはなんとなく読める人にとっては、本書を読むことで経済的自由に向かって一歩近づくことができるのではないだろうか。

本書の内容を簡単にまとめると、収入に関する4つの属性(キャッシュフロー・クワドラント)を理解し、経済的自由を得るための属性を取得する方法を学び、お金のルールを学ぶ、といった3つのステップからなる。以下、順を追って説明してみる。

はじめにキャッシュフロー・クワドラントについての説明に入る前に、まずは次の4つの中から自分の価値観にもっとも近いと思われるコトバを選んでみて欲しい。

1. 私は給料が高くて福利厚生のしっかりした、安定した仕事を探している
2. きちんとやりたかったら自分でやれ
3. 私のチームに加わってくれる最高の人材を探している
4. 投資収益率はどれくらいか?


これは以前に読んだ金持ち父さんの21世紀のビジネス (書評記事へ)で紹介されていたコトバである。これら4つの価値観がそのままキャッシュフロー・クワドラントに当てはまる。キャッシュフロー・クワドラントは、E, S, B, Iの4つの価値観をもっていて、それぞれのクワドラント毎に主要な収入源が決まっている(下図)。まとめると以下のようになる。

E | B
------
S | I

・Eクワドラントの価値観(安全):「私は給料が高くて福利厚生のしっかりした、安定した仕事を探している」このクワドラントはシステムのために働く。

・Sクワドラントの価値観(独立):「きちんとやりたかったら自分でやれ」このクワドラントは本人がシステムとなって働く。

・Bクワドラントの価値観(富の形成):「私のチームに加わってくれる最高の人材を探している」このクワドラントはシステムを作り出したり、管理したりする。

・Iクワドラントの価値観(経済的自由):「投資収益率はどれくらいか?」このクワドラントはシステムにお金を投資する。

たいていの人は左側のEかSのクワドラントに属している。Eクワドラントというのは従業員を意味しており、日本でいうサラリーマンに相当する。Eクワドラントがだれかに雇われていてボスがいる一方、Sクワドラントは自分がボスになる。開業医や弁護士、自営業者、会社の社長といった人たちがこの部類に入る。EとSの左側のクワドラントでは主な収入源は給与所得であり、働くことをやめたら収入がなくなる。そして、所得からまずはじめに税金(所得税)が引き抜かれ、残ったお金が手取りとして自分の懐に入る。一方、右側のクワドラントであるBやIは自分が働かなくても自分の懐にお金が入ってくる。しかも、お金がまず自分の懐に入ってきて、その後に税金が引かれる。不労所得といわれるお金もこれら右側のクワドラントからもたらされるものであり、ロバート・キヨサキ氏は「経済的自由を手に入れるための道はこの右側のクワドラントへ移ることだ」と説く。

しかし左側のクワドラントで今まで生きてきた人にとって右側のクワドラントへ移ることは、かなり大変である。というのも本人の価値観を変えなければならないため、頭で理解していても心で理解しないかぎり左側から右側のクワドラントへ移ることができないからである。さらに言えば右側のクワドラントで成功するためには学校教育を全否定しなければならない。今まで学校でいい成績をとってきた人ほど右側のクワドラントへ移ることが大変となる。

なぜ学校教育を全否定しなければならないか。それは、学校教育というのは失敗を許さない傾向があるためだ。本書にはこうあった。「成功から多くは学べない」金持ち父さんはいつもそう言っていた。「私たちは失敗したときに、いちばんよく自分について学ぶ。だから、失敗を恐れるな。成功に失敗はつきものだ。失敗せずに成功することはできない。だから、失敗しない人間は成功もしない」(p.94)頭では理解しているつもりでも、これを心で理解することは難しい。例えば、JALの株に100万円投資して、気がつけばJALの破産がニュースで流れ、売ろうと思っても買い手がつかずに結局100万円を損したとする。このことを妻や夫、親や子供といった親しい間柄の人にあなたは正直に話すことができるだろうか。話したとして、いったいどんな反応が返ってくるだろうか。たいていは、「えーー!!なんで大金をそんなバカなことに使うの!これからいったいどうするのよ!!!」といった反応ではなかろうか。そして本人も自分を責めずにはいられなくなる。決して「あはははは。ずいぶん派手にヤッタねぇ。失敗することはいいことだ。人は失敗から多くを学ぶ。それで今回はどんなことを学んだの?」なんて反応する人なんかまずいないし、心からそう思うことも難しいのではないだろうか。

学校教育は、間違えたり失敗したりしたことを減点し、他人よりいかに良い点をとるかを競わせる。その結果、間違えたり失敗したりすることは悪いことだという価値観が埋め込まれる。左側のクワドラントでは常に誰か他人と競わないといけないし、自分の評価も他人にゆだねられる。しかし、右側のクワドラントへ移るためには、これまでの価値観を変え、自分自身と戦わなければならない。本書ではこうアドバイスする。左側のクワドラントから右側のクワドラントへ移動するときに大事なのは、「何をするか」ではなくて「どんな人間になるか」だ。断られることに対する恐怖心を克服し、他人が自分のことをどう思うかなど気にせず、人をリードする−−この三つの方法をマスターできれば富を手に入れることができる(p.105)。

4つのクワドラントの価値観を学び、左側から右側のクワドラントへの移り方を知ったら、最後にお金のルールを知らないといけない。お金のルールといっても難しいことはなく、金持ち父さんは「お金というのは単なるゲームだ」という。本書にはこうあった。資本主義というゲームの基本は「だれがだれに借金をしているか?」ということだ。ゲームを知ってはじめて優秀なプレーヤーになれる(p.150)。さらにこう続く。「お金を借りている相手が多ければ多いほど、きみは貧乏になる」金持ち父さんはそう続けた。「反対にお金を貸している相手が多ければ多いほど、きみは裕福になる。これがゲームの基本だ」(p.150)。つまり、この資本主義というゲームを有利にすすめるためには、お金を貸している相手を増やせばよいのである。実にシンプルな説明であるものの、この言葉を真に理解し、日常生活でゲームを有利に進める努力をしている人はナカナカいない。私が「金持ち父さん貧乏父さん」を読んだのがもう今から5年以上も前になるものの、今回の本を読んでやっとこの意味が理解できたような気がする。

経済的自由を手にいれるためには、本を読むだけでなく、実際に行動しないと意味がない。しかし、以前の私を含め、たいていの人は経済的自由の概念すら知らないし、資本主義というゲームに参加している意識すらほとんどない。本書を真摯に読めば、お金に関する当事者意識が芽生え、経済的自由の道を歩みはじめるキッカケがつかめると思う。

金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント
ロバート キヨサキ
筑摩書房
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------ lhfluxの評価 ------
総得点 (15点満点) : 15 点
内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点
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目次
第一部 クワドラントの右側か左側か
 第一章 私があえてホームレスになったわけ
 第二章 クワドラントが違えば人間も違う
 第三章 人はなぜ自由よりも安全を求めるのか
 第四章 ビジネスシステムを手に入れる
 第五章 まずはレベル4の投資家になる
 第六章 お金は目に見えない
第二部 最高のあなたを引き出す
 第七章 なりたい自分になる
 第八章 どうしたら金持ちになれるか
 第九章 銀行そのものになれ
第三部 クワドラントの右側で成功するために
 第十章 まずはヨチヨチ歩きから
 第十一章 ラットレースから抜け出すための七つのステップ
 おわりに 道はかならず見つかる


-- 本書に登場した書籍と解説 (画像はアマゾンへ飛びます) --

・"Think and Grow Rich" (頭を使って金持ちになろう)

この本のタイトルが「一生懸命働いて金持ちになろう」や「仕事を見つけて金持ちになろう」ではなく、「頭を使って金持ちになろう」だというのには大きな意味がある。実際のところ、いちばんせっせと働いている人たちは結局金持ちになれない。金持ちになりたかったら、頭を使う必要がある。みんなの考えについていくのではなく、自分自身で考えなければいけない。

・"Emotional Intelligence" 邦題「EQ−−こころの知能指数」(p.191)

この本の中でゴールマンは、学校でよい成績をとった人が実社会でかならずしも金持ちになるとはかぎらないという、昔から言われている「謎」の解明を試みている。ゴールマンはその理由を、学問的な知性よりも感情面の知性の方が強いからだとしている。だからこそ、危険を冒し、間違いを犯してそこから立ち直った人の方が、危険を恐れるあまり、間違いをしないことだけを学んできた人よりも成功する確率が大きい。

・"The Worldly Philosophers"

歴史上に残る偉大な経済学者・経済の専門家を取り上げたこの本は、BとIのクワドラントで活動したいと思っている人の必読書だ。最も偉大なる思想家たち、つまり経済の専門家たちの頭のなかをかいま見るのはじつにおもしろい。この本を読むと、そういった専門家たちが、現代資本主義の発展についてどのような解説を行っているかよくわかる。

・"Unlimited Wealth", "The Sovereign Individual", "The Great Boom Ahead"

"The Worldly Philosophers"の次に読むオススメの本。"The Worldly Philosophers"が経済の過去の歩みを教えてくれる一方、これらの本は私たちがこれからどこに進もうとしているのかを教えてくれる。この二つの対照的なものの見方は、目に見えないもの、つまり未来を見せてくれるという点でとても重要な意味を持っている。


---- 財務諸表が読めるようになるための本 ---
テキストリンクは書評へ、画像はアマゾンへとびます。
財務3表一体理解法 (國貞克則)


・キャッシュフロー101
ゲームを通してお金のことを学ぶなら、ロバートキヨサキ氏が考案した「キャッシュフロー101」がオススメ。「すごろく」のようなボードゲームで、遊びながら学べる。内容重視である一方、コマがドギツイ色をしていてキャラクター性は乏しい。





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posted by lhflux at 13:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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