2011年07月16日

20代で身につけたい質問力 (清宮 普美代)

「一番じゃなきゃだめですか?」

2010年度分の事業仕分けのとき、当時仕分け人を努めた蓮舫議員が次世代スーパーコンピュータの開発費をめぐる議論で言い放った質問である (正確には、「世界一になる理由は何かあるのでしょうか。2番ではダメでしょうか」と主張していたようだ。)

この質問には賛否両論があるだろう。ある人は戸惑い、ある人は興味をもち、ある人は憤慨し、ある人は同意し、ある人は応援し、ある人は敵対視した。質問の是非はともかく、この質問によって多くの日本人の中で何かが動いた。非常にシンプルであるにもかかわらず、日本社会の関心を一気に集め、これだけ日本国民に大きなインパクトを与えた質問はめずらしい。この質問で日本国民はいったい何を動かされたのだろうか。こういった質問は人々にいったいどんな変化を引き起こすのだろうか。

以下に、本書にかかれていた質問のもつ力について紹介してみる。なお、本書は株式会社ラーニングデザインセンターの藤田様より献本いただきました。どうもありがとうございます。


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Googleで検索すると即座になにかしらの答えが返ってくる現在において、私たちビジネスパーソンに必要なことはいったいなんだろうか。著者は、たくさんの正解を知っているよりも、「考える力」をもっていることが重要です(p.9)と説く。ビジネスにおける「考える力」の重要性については、大前研一氏も頻繁に口にしてる(例えば、慧眼とか)。しかし、「勉強する」といえば「たくさんの正解を学ぶことだ」という教育方針の基で育った若手ビジネスパーソンにとって、いまさら「考える力」を養えと言われても、具体的にどうしたらいいかワカラナイかもしれない。

そんな「考える力」を養いたい人が、まず「考えるきっかけ」をつくるのが「質問」である。

著者はこう言う。疑問系で問いかけられると、人の脳は作動せずにはいられません。自分なりの答えを考えはじめます(p.9)。冒頭で述べた蓮舫議員の質問に対してアレだけ社会へのインパクトが大きかったのも、あの質問が人々に考えるきっかけを与えたからだと思えば納得がいく。ある人は「一番じゃなきゃダメなんだよ。なぜなら.....」と自分の考えを述べただろうし、またある人は「別に一番じゃなくてもいいじゃん。だって.....」と持論を展開しただろう。「考える力」を養うには、「考えるきっかけ」が必要であり、その最初のきっかけは「質問」によって生まれる。

本書はそんな「質問」を軸にして、ビジネスに必要なスキルについて考えていく。本書でとりあげられている主なテーマは大きくわけて3つあり、それぞれに対応したビジネススキルがある。以下に詳しくみてみよう。

相手について考える:コミュニケーションスキル (第1章 & 第3章)
問題について考える:問題解決力 (第2章)
自分について考える:自己啓発 (第4章)

まず、ビジネスにおいて最も大切な能力がコミュニケーションスキルである。仕事をするにしても生活するにしても、人は一人では生きていけない。ビジネスにおいてもこの事実は変わらない。会社の上司や同僚はもちろん、お客や取引先と良好な人間関係を築くことができれば、物事はスムーズに流れていく。しかし、世の中には気の合う人ばかりではなく、価値観が合わなかったり、生理的に嫌いという人もいるだろう。ビジネスとなると、たとえどんなにイヤでも、そういった苦手な人とも良好な人間関係を築いていかなければならない。その基本は相手を深く理解することである。相手を深く理解するには、相手の話をよく聞かないといけない。相手の心を自分の思い込みで勝手に決めつけるのではなく、相手に「質問」してみて、相手の心を深く知る必要がある。これがコミュニケーションスキルを養うための第一歩である。

次に大切な能力が、問題解決力と自己啓発である。

問題解決力とは、まさに問題を解決する力のことである。このようにいうと、「いかに正しい答えを見つけることができるか」が重要であると思うかもしれない。しかし、「正しい答え」を見つけることよりも「正しい質問」をみつけることの方がその何十倍も大切である。例えば、本書には「急ですまないんだが、明日の会議で使う資料を作成してくれないか」と上司に頼まれた(p.94)ときの状況がでてくる。ここでうっかり、「どうやって明日の会議までに資料を作成すればよいか」という問いを設定してしまったらどうなるか。かなり厳しい状況ではあるものの、徹夜して、まわりの同僚や恋人の助けを駆使し、なんとか翌日の会議がはじまる一分前に資料が完成したとする。急いで会議室に向かってドアノブを回す。心配そうな顔をしている上司に「資料をもってきました!」と手渡す。その様子をみて上司は力強くうなずき、「よくやった」と目配せをする。ドラマによくありそうな設定であり、ドラマはこれで「めでたし、めでたし」と終わる...。

しかしながら、現実でこんなことをすると、本人の評価があがるどころかリーマンショック並みの大暴落である。本書には、「上司は、ぎりぎりに資料を渡されて納得するだろうか?」と問いを発することができる(p.94)かどうかが鍵であると書かれている。自分が上司の立場だった場合、ぎりぎりに資料を渡されて、一度も目を通したことのない資料を使ってプレゼンできるかどうかを考えれば、答えはおのずとわかるだろう。「正しい質問」をみつけることができるかどうかが、問題解決のポイントとなる。

3つ目にあたる残りのスキルは自分について考える自己啓発である。自己啓発というのは、言ってしまえば「自分はいったいナニモノか」を考えることになる。本書はそれを「自分軸は何か?」(p.169)と問う。ドラッカー風にいえば「自分が何によって覚えられたいか?」となるだろう。自己啓発については、私の姉妹サイトである書評の散歩道にて、自己啓発のまとめページ(ここ)があるので、詳しくはそちらをどうぞ。また、簡単な診断テストもあるので試してみるといいかもしれない(自己啓発レベルを診断する)。

以上みてきたように、本書は「質問力」をベースにして、ビジネスに必要な考える力についてまとめた内容である。全体を見渡すと、コミュニケーションスキルに紙面の半分を費やし、残りの半分を問題解決力と自己啓発に費やすという、ビジネススキルを語るうえでバランスのよい構成となっている。また、タイトルには"20代で身につけたい"とあるものの、上司の人を対象にした記述もあり、30〜40代の人でも参考になる部分もある。各章には10項目程度のサブテーマがあり、それらサブテーマについて図表つきで2〜3ページの説明がなされている。また、章の終わりには「まとめ」まであり、要点を理解できるよう工夫されている。

本書は分量も少なく、読書に慣れている人なら1時間程度で読み終わるだろう。多くのビジネス書を読んできた人には本書がちょっと物足りなく感じるかもしれないものの、ビジネス書をほとんど読んだことがない人やあまり読書をする習慣のない人は、最初のステップとして本書を読んでみることを勧めたい。本書を読めば、読書を通したスキルアップのキッカケを与えてくれると思う。




20代で身につけたい 質問力
清宮 普美代
中経出版
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目次
Part 1 質問で人間関係がうまくいく!
Part 2 質問で問題解決がうまくいく!
Part 3 質問で人を動かす!
Part 4 質問が自分を育てる!


---- もっと詳しく知りたい人へ ----
コミュニケーションスキル
人を動かす (D. カーネギー)

問題解決力
いかにして問題をとくか (G. ポリア)

自己啓発 (自己啓発のまとめページへ)
仕事は楽しいかね? (デイル・ドーテン 訳=野津智子)
「やればできる!」の研究 (キャロル・S・ドゥエック)
プロフェッショナルの条件 (P.F. ドラッカー)
7つの習慣 (スティーブン・R・コヴィー)



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posted by lhflux at 09:57| Comment(0) | TrackBack(2) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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20代で身につけたい質問力
Excerpt:  質問する力の大切さと、どのように質問をすればよいかについて解説した「20代で身につけたい質問力」(清宮普美代:中経出版)。  皆さんは、こんな体験をしたことはない ...
Weblog: 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館]
Tracked: 2011-07-24 10:08

20代で身につけたい質問力
Excerpt: 本書冒頭に曰く、質問力が高いと「人間関係がうまくいきます」「問題解決がうまくいきます」「人を動かすことができます」「自己成長につながります」と、本書が言う「質問力」という力は随分と強力なのだ。
Weblog: 本読みな暮らし
Tracked: 2011-08-06 12:40
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