2011年06月03日

COURRiER Japon (クーリエ・ジャポン) 2011年7月号

日本にいると忘れがちになるものの、今の国際社会がかかえる大きな問題が2つある。それらは、エネルギー問題と地球温暖化問題である。近年の医療技術の発達や環境インフラの整備とともに世界の人口は増加し、半世紀前よりももっと多くのエネルギーが必要となってきた。原油のようなこれまでの化石燃料に依存した発電技術では、いつかその燃料源が枯渇してしまう。さらに、こういった化石燃料に依存したエネルギー源では、人為起源二酸化炭素の放出に伴う温暖化問題といった地球環境への負荷が大きすぎてしまう。

今後も続くであろう人口増加と、ますます増えるであろうエネルギー需要を満たすために、今よりももっと莫大なエネルギーを創りだし、かつ、地球環境への負荷を今よりもグッと小さくする方法はないだろうか。これらを満たすような方法があれば、エネルギー問題と地球温暖化問題の両方を同時に解決できるかもしれない。そんな夢のような解決策が果たしてあるのだろうか。

その答えとなりうるのが、「原子力発電」... のはずだった。

ご存知のとおり、この夢の解決策は3.11 に起きた東日本大震災によって、まさに夢となってしまいそうである。世界に誇る安全技術をもった日本で、チェルノブイリ原発事故に匹敵したレベル7という史上最悪規模の原発事故が起こってしまった。この事実は、日本だけでなく、海外でも重く受け止めている。

原子力発電という解決策が厳しいとわかった今、世界で繰り広げられているエネルギー政策は今後どこへ向かうのだろうか。「わかりやすいニュース」でおなじみの池上彰氏による見解が今月号のクーリエジャポンにまとめられている。以下に詳しくみてみよう。

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エネルギー問題には、主に3つの側面がある。それらは、経済、安全保障、環境である。「オイルマネー」というコトバがあるように、言うまでもなくエネルギー問題は経済と密接に関係している。その経済規模は一国家に匹敵するため、中東情勢や日本の原子力事情を見ていれば分かるように、莫大な利権がからんでいる。利権がからめば企業だけでなく、政治家達も群がり、軍事レベルの話にまで発展する。中東の不安定な情勢は、宗教的な側面だけでなく、オイルマネーをめぐった利権も絡んでいるようだ。オイルマネーに関する経済的な側面は、特集記事の「原油価格の高騰は世界経済にどのような影響を及ぼしますか?」(p.20-)新しい石油大国ブラジルは21世紀の先進国になれますか?が参考になる。これらに加え、原油のような化石燃料を使用したエネルギー源では、地球規模での環境への負荷が大きく、一国レベルではなく世界の国々が協力して対処する必要がでてくる。

上で述べた3つの側面にそって原子力発電についてみてみよう。原子力発電は実用化するまでに国家規模の予算が必要であるものの、一度稼働すれば長い期間稼働し続けることができ、稼働期間が長くなるほど発電コストが安くなる。また、冒頭でも述べたとおり、原子力発電は、その発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして、地球温暖化問題を解決するための最有力候補であった。こういった経済的および環境的な側面は、原子力発電の利点として、これまでも日本のマスコミで大々的に報道されていた。

しかし、原子力発電には、記事「フクシマの悲劇を引き起こした癒着と馴れ合いが生じた原子力村」(p.102)で言われているような利権がらみの経済的な問題に加え、安全面で2つの大きな欠点を抱えている。ひとつが放射能汚染、もうひとつが核兵器である。

放射能汚染の問題は、我々日本人が身をもって体験していることだろう。先日、福島の土壌から163000ベクレルのセシウム137が検出された( 例えばこの記事)。セシウム137は、マスコミでも頻繁に騒がれているように、半減期が30年である。こう聞くと、あたかも数十年すれば脅威が去ると錯覚しそうになるかもしれない。しかし、放射線量の値が一桁小さくなるのに100年程度かかることはあまり意識されていないようだ。例えば、仮に多大なる努力によってセシウム137の放射線濃度を100ベクレル程度にまで除染したとしても、その後、半減期によって1ベクレル以下にまでなるのにあと200年程度はかかる。つまり、この放射能汚染の問題を少なくとも今後100年間は向き合い続けないといけない。放射能汚染の恐ろしさは、記事「チェルノブイリより恐ろしい…旧ソ連出身の科学者が語る"フクシマ"」(p.100)にも記載されいている。

一方、日本にいるとあまり気にしなくなってしまうのが核兵器の問題である。今月号のクーリエ・ジャポンの記事「イランは石油資源が豊富なのに、なぜ原発にこだわるのですか?」(p.24-)をみると、原発を保有することは、核兵器を保有することを意味するそうだ。現在、原発推進派に舵をきっているアメリカは、日本や中国が原発を増産することを後押しするも、イランや北朝鮮が原発を持つことは警戒している。政治的に不安定な国が、公に「平和利用のための原子力技術がほしい」と宣言しても、極秘裏に核兵器開発が進められることを欧米各国は恐れているためだそうだ。世界では、原発と核兵器開発をセットでみる傾向があるものの、核爆弾の恐怖を身をもって体験し、さらには「非核三原則」まで提唱した日本で原発事故が起きるなんて、なんとも皮肉なことである。

原子力発電に陰りが見えてきた現在、世界のエネルギー情勢どこへ向かうのだろうか。池上さんによれば、これまでの化石燃料や原子力に依存したエネルギーは終わると予想している。今後は、地球環境への負荷が小さい持続可能なエネルギー源に急速に移行するものの、しばらくの間は、環境への負荷が比較的小さく、発電コストも安い天然ガス(シェールガス)が有力視されている。今後のエネルギー情勢は、3つの特集記事「今後、原子力に替わる最も有望なエネルギー源はなんですか?」(p.29-)、「豊かな資源が眠る北極海に、地球温暖化が与える影響は?」(p.34)、「植物から作るバイオ燃料が石油の替わりになる日は来ますか?」(p.46)が参考になる。

以上みてきたように、原子力関係の記事を中心に今月号のクーリエ・ジャポンをまとめてみた。しかし、読者の中には、「もう原子力関係の話は飽きた」という人がいるかもしれない。そういう人向けに、私が興味をもって読んだ次の3つの記事タイトルを最後に紹介してみる。

・タックスヘイブンで「脱税ができるかな」(p.120)
・ここまで進化した世界の「エリート教育」(p.108)
・リーダーシップの本質、それは"孤独"である(p.84)




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