2011年05月02日

COURRiER Japon (クーリエ・ジャポン) 2011年6月号

「フクシマ」といえば何?

2011年3月以前なら、人によって答えがバラバラであったのではないだろうか。私にとって数ヶ月前までの「フクシマ」は、車の免許を合宿でとった思い出深い土地であった。

それが今や、「フクシマ」といえば「原発問題」の代名詞になっている。そして、世界中のメディアもこの「フクシマ危機」に注目している。原発事故が起きてもなお、しきりに原発は安全だと言い続けている日本政府。それは果たして本当だろうか。チェルノブイリ原発事故が起きてから25年経過した現在、現地はどうなっているのか。そして「フクシマ危機」を海外メディアはどのように報じたのだろうか。もしくは、「フクシマ危機」を超えるさらなる注目記事があるのだろうか。

以下に、今月号のクーリエ・ジャポンに書かれた原発ネタと世界の動向について簡単にまとめてみる。

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今月号のクーリエ・ジャポンは主に2つのテーマがある。一つは当然「原発関係」。これが全体の半分程度をしめている。そして、日本にいると忘れがちになってしまう注目のテーマが「リビアに代表される中東や北アフリカの民主化デモ」。CNN student news を見ていても、この2つのテーマについては頻繁にとりあげられている。この他にも、イギリス王国の結婚の話題や水ビジネス等、それなりに気になる記事がある。しかし、日本に住む私にとってしてみたら、やはり「原発問題」のインパクトがあまりに強すぎて、それ以外の記事は残念ながら、かすんでしまう。ということで、ここでも「原発問題」に注目してみよう。

今月号の「原発問題」関係の記事は、できるだけ感情論にならないよう注意した構成となっている。その結果、全体としてはかなり弱気な編集という印象をうけた。とはいえ、原発問題にからんだ広い視野を持つには参考になる内容でもあった。特に今回の原発事故において欧米では、温暖化問題とからめたエネルギー政策論と放射性廃棄物の処理が主要なテーマになっているようだ。

私が弱気な編集と最初に感じたのは表紙である。まず表紙は、青空の背景に透明な核のマークを重ねている。普通、核のマークは黄色と黒の目立つ色で印されているものの、ここではそのマークを透明にして、目立たなくさせている。また、背景に青色を使うことで、できるだけ感情をあおらないよう気をつけている様子が伺える。つまり、表紙をパッとみただけで、特集が原子力関係だとは気づきにくい。

さらに、日本政府や東電の批判を扱っている海外メディアの記事がほとんどなかった。強いて言えば、韓国メディアが報じた"旧ソ連を批判する資格などなかった!? 汚染水放出を隣国にも知らせない日本"である。しかし、この記事もタイトルに対して内容が控えめで、"日本政府は「ソ連は情報を公開せず隠蔽している」と強く非難したものの、今は直接被害が及ぶであろう隣国の韓国にすら情報を開示してくれない"という主張で終わる。改めて日本の国の悪い面である、多勢に無勢な状況ではガンガン行くも、状況が悪くなると急に歯切れが悪くなる特徴を痛感させられた。

今回の記事で私がちょっと驚いたことは、これだけの事故を起こしても原発推進論が未だに根強い理由である。ドイツではチェルノブイリ事故の被害が甚大であったため、今回の日本の原発事故を見て原発廃止論が勢いづいた。一方、フランスをはじめとした原発推進派の意見としては、温暖化問題との絡みで議論するようだ。ひとつのロジックとして、放射能汚染はそれほど人体に影響せず、それよりも人為起源物質の排出に伴う温暖化問題の方が深刻であり、温暖化問題を解決するには、現段階では原発にかわるエネルギー資源がないので、原発は必要だという主張である。ただし、私としては原発の発電コストの見積もりに疑問があり、安全管理にかかる経費をどの程度、計上するかによって、いかようにでも計算できてしまうのではないかと危惧する。

そして、原発問題で最も深刻な課題が放射性廃棄物の処理である。一般の報道では、今回のフクシマ原発から放出された放射線量は一般人の健康被害を及ぼすほどではない、としきりに訴えられている。さらには、放射線量の増加によってガンになるリスクはたいして高くない、という。今回の特集にもあったチェルノブイリ事故の影響をみると、放射線は人間のみならず動物でも、遺伝子の突然変異する確率を大幅にあげるようだ。ガンの原因が遺伝子の変異であることを考えれば、放射線を浴びすぎると発癌リスクが高まることと整合する。ただし、人間60歳にでもなれば病気のリスクも上がるので、放射線を浴びすぎたことによる発癌リスクの増加はたいして高くないというのもうなずける。

そうはいっても、原発はもうイヤだ、と私は思う。その最大の理由は、放射線によって最も被害を被るのが子どもだからである。チェルノブイリ事故のときもそうであったように、放射線被爆による健康被害は子どもの甲状腺ガンのリスクを高め、さらにその影響が事故から10年程度経過してから顕著となるそうだ。今回の記事には、原発事故後に子どもへの健康被害に心配するあまり、うつ病になってしまう親も多いと記事にはあった。私も三歳の息子をもつ親として、この心情は大変よくわかる。私のようなオトナが放射能に汚染した水や食物をちょっとくらい口にしたとしても、子どもができなくなったり、ちょっとガンになる確率があがるくらいで、あまり大きな問題ではないだろう。しかし、今の子ども達や、将来は子どもが欲しいと思っている若い人たちにとっては、放射線被爆のリスクを少しでも下げるべきではないだろうか。

原子力発電に伴う放射線廃棄物の問題にしても温暖化問題にしても、その被害を最も被るのが今の日本の子どもたちであり、さらには、これから生まれてくるであろう子どもたちである。年配のエライ人達が今は「大丈夫、問題ない」と言っていたとしても、いざ10年後になってみて、「やっぱり問題ありました。ごめんなさい」と言われても、そのときはもう遅いのである。しかも、そういった無責任な発言をしていた人たちが、そのときにはすでにコノ世にいなかったりする可能性も高い。仮にこの原発危機を乗り越えたとしても、日本の風上にあたる中国で原発事故が起きるとも限らない。本書にの記事を読んで知ったのだが、中国には建設中、計画中、提案中などさまざまな段階の原子炉が77基あり、当局は福島の事故を受けて計画を見直すと発言しているものの、完全にストップする可能性は低い(p.24)のだそうだ。

今ここで、日本がもっと安全なエネルギーに転換しなければ、20年30年と経つにつれて、ますます自分たち、さらには子孫達の首を絞めることになりそうである。なんとかしたい、と思うものの、今の自分がいかに無力であるかは痛いほどよくわかっている。今はアセらずに、コツコツと自分の仕事を全うし、力をつけていくしかないのだろう。10年後、20年後に能力が発揮できるように。



原発関係の記事一覧
・「フクシマ危機」の衝撃で原子力の未来はどう変わるのか
・放射性廃棄物の"終着地"英国の再処理工場へ潜入
・廃墟と放射線と野生動物と…「25年後のチェルノブイリ」
・環境保護派のあいだでも意見対立 それでも原子力は「地球に優しい」?
・"フクシマ"後に大躍進「緑の党」はドイツを変えるか
・代替エネルギーがなければ原子力はやめられない
・大震災で立ち上がった若者たちが日本の権力構造に風穴を開ける
・もう政府やエリートには頼れない…に本の未来を決めるのは国民だ
・「まさかの時」のために貯め込んだ1兆ドルの外貨を復興のために取り崩せ
・放射能汚染という"悪夢"が日本人の心に残した傷の深さは
・被災地の支援活動で評価が高まり…変わりつつある"自衛隊を見る目"
・旧ソ連を批判する資格などなかった!?汚染水放出を隣国にも知らせない日本
・大本営原発部発表「大丈夫・心配ない・安全・ただちに健康に…」
・佐藤優の国際ニュース解説室


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posted by lhflux at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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