2011年02月26日

デジタルネイティブの時代 (木下 晃伸)

今から半年前...

「おと〜さ〜ん、トイストーリ、みた〜い」

「チョット待っててね。まずは、iPad の電源を入れて、えーと、あ、これだ。はい、どうぞ。」

「チャラーラ♪ チャラーラ♪ チャラララララーン♪…」

そこには、iPadのアプリを愉しむ息子(3歳)がいた。


あれから半年後の現在…。

「おと〜さ〜ん、iPad どこ?」

「そこの戸棚の中に入ってるよ」

ダッダッダッダッダ、

「ここ?」

ガサゴソ、ガタッ、ゴゴゴゴ。

「あった。」

ダッダッダッダッダ、ゴトン。

「カチャ、…、ジャンジャン♪ ジャカジャカジャンジャン♪、ピロ、…、ピロ、…、ブーーーーン♪」

気がつけば、息子(3歳半)がひとりで勝手にiPad を持ち出し、自分で電源を入れて、アプリを選択し、車のゲームで遊んでいる。

そんな息子を連れて、家電量販店のノートパソコン売り場をウロついていた、ある日のことである。息子はあたりをキョロキョロ見回して、近くにあった Windows のノートパソコンに興味を持った。パソコンを使ったことのない息子が、いったいどういう行動をとるか気になってきたので、店員の冷たい視線を全く無視して(店員さんゴメンなさい)、しばらく様子を見守ってみた。

ガチャガチャガチャ。キーボードをランダムに叩き始めた。「まあ、そうだろう」そう思ってもなお放置していたら、急にモニタ画面を指で押し始めた。何度か同じところを押して、変化もない画面を不思議そうに眺めている。どうやら、iPad に慣れているせいで、モニタ画面を押せば、それが起動するのだと思っているようだ。

もうしばらく様子を見ようと、私は息子を放置してみた。息子は再度、モニタ画面を押して、半ばキレぎみに画面を叩こうとすると、店員があわてて駆けつけてきて、止めに入った。息子と私は二人で店員に怒られるも、息子は解せない様子である。われわれ大人にとって、パソコンにマウスがあるのはアタリマエの事実であるものの、息子にとってはパソコンにマウスが無いことが、アタリマエとなっているようだ。

そう、デジタルに関する我々大人の常識は、あっと言う間に古くなりつつあるのだ。このように、我々世代の常識とはことなった常識をもつような、20代以下の世代の人たちを、本書ではデジタルネイティブと呼ぶ。以下に、本書について紹介してみる。

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本書では、生まれたときからインターネットが身近にあふれ、それを使うことが当たり前になっている世代のこと(p.1)をデジタルネイティブと呼んでいる。具体的には、平成生まれ以降の世代のことを指す。本書は、デジタルネイティブの思考法からはじまり、デジタルネイティブを生み出したインフラについて考察し、それをどうやってビジネスに結びつけるかに焦点を当てている。膨大な調査を基にした論理展開というよりはむしろ、著者の木下氏が感じていることをまとめた内容となっている。

冒頭の息子とのやりとりでみたように、私も日頃からデジタルネイティブの思考法が気になっていた。ちょっとでもその思考法が理解できればと思い、本書を手にしたものの、残念ながら私にとっては物足りない内容であった。一番がっかりしてしまったのが、著者のデジタルネイティブに対する理解である。著者は次のように述べている。

デジタルに対する我々「ノンネイティブ」が、「ネイティブ」のことを理解することはできない、ということを理解することが重要だ(p.72)

つまり、デジタルネイティブの思考法を理解することを、はなから諦めてしまっているのだ。それを言ってしまっては、元も子もないではないか、と私は思ってしまう。本書でもチラっと述べてあった(ような気がする)ように、どんなに文明が急速に進化しても、人間の本質はそれほど急には変わらない。ならば、たとえデジタルネイティブであろうとなかろうと、その本質は変わらないと私は思う。だって人間だもの。

一方で、本書にはIT関連の環境の変化については詳しく書かれていた。特に著者が注目していることは、コミュニケーションの仕方である。ITを通したコミュニケーション関係のインフラが整うまでは、もっとも便利なツールが電話であった。電話では、1対1のコミュニケーションが基本となる。さらに、電話は相手のことを強制的に呼び出すため、電話の相手の状況を気にかける必要がある。

その後、ITの進化とインフラが整うことで、コミュニケーション手段が多様化した。特に、ブログやツイッターなどのソーシャルネットワーク(SNS)を利用することで、1対多のコミュニケーションが可能となった。ブログやSNSを利用すれば、自分の友達に簡単に近況報告することができし、自分も友達の近況を知ることができる。しかも、電話とは違って、相手が今どんな状況であるか気にする必要がない。暇なときにブログをチェックすればよく、自分の都合に合わせてコミュニケーションがとれるのだ。

この1対多のコミュニケーションをノンネイティブにも理解できるよう伝えるには、年賀状を例にするといいかもしれない。年賀状は、相手の状況を気にすることなく、自分の近況を知らせる最も便利なツールであった。とはいっても、これは1年に1回だけである。また、近況報告の手紙を友達に書こうとしても、よっぽどの筆マメでないかぎり、かなり骨が折れる作業であった。現に、毎年のように「暑中(残暑)お見舞い申し上げ」る人は、ノンネイティブといえど、それほど多くないのではなかろうか。

それが今や、ブログやツイッターというツールが存在する。しかも、これらが無料で使用できる(ただし通信料は除く)。つまり、近況報告にブログやツイッターを利用するということは、年賀状を頻繁に書いているようなものだ。しかも、その"年賀状"を見たい人たちは、自分の都合でフラッと相手の近況を知って、さらには、まるで立ち話でもするかのように、SNSを利用してコミュニケーションがとれるのである。デジタルネイティブにとっては、それが当たり前なのだそうだ。

デジタルネイティブに興味をもつキッカケをつくりたい人には、最初の導入として、まず本書から始めるのも良いかもしれない。
デジタルネイティブの時代デジタルネイティブの時代
木下 晃伸

東洋経済新報社 2009-05
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------ lhfluxの評価 ------
総得点 (15点満点) : 9 点
[内訳] 文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 3 点, 感動 (1-5) : 3 点
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第1章 増殖する「デジタルネイティブ」
第2章 「ノンネイティブ」たちが今気づかなければならないこと
第3章 インフラの発展が意味すること
第4章 デジタルネイティブを生み出したビジネス巧者たち
第5章 ネットでビジネスを劇的に変える


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posted by lhflux at 14:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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