2011年01月22日

10年先を読む長期投資 (澤上 篤人)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 3 点, 感動 (1-5) : 4 点

ここ数日、関東では寒い日が続いている。

だからといって、「温暖化なんてウソだ!」と叫ぶ人を今年の冬はあまり見かけない。さらには、天気予報で"明日の天気は晴れ"と予報して、雪が降ったとしても、「明日の天気もアタらねぇのに、なんで温暖化が予測できるんだ!」と叫ぶ人が、去年と比べてかなり減った気がする。ちょっとくらい冬が寒かったとしても、うだるような暑い夏がまたやってくることを、一人一人がだんだんと感覚的に実感してきているのだろう。そして、5年10年と年月が経てば、あのトロけるような暑い日もだんだんと増えていくことをなんとなく予感し、不安になりはじめているのかもしれない。

人々が日々の生活で実感しているように、天気と温暖化とはいろんな面で大きく異なる。天気は日々の現象であるのに対し、温暖化は50〜100年先の話である。それらを支配するメカニズムも当然違う。非常に簡単にいえば、天気は大気の気まぐれで変化するのに対し、温暖化は地球の熱容量の変化で起きる。そもそも、両者は扱っている問題が違うのだ。

株式投資もこれと似ている。株式投資は、おおまかに短期投資家と長期投資家の二手に分かれる。

短期投資家は、デイトレーダーのように日々の株価を追い、上の例でいえば天気に相当する。日々の株価は、株式トレーダー達の思惑、政府の動向、トピック的なニュース、業界のウワサといった市場参加者達のいわば気まぐれで容易に変動する。その変動は大きくて値動きも激しく、天気予報がたまにはハズれるように、株価の値動きをいつでも正確に言い当て続けることは難しい。勝つ人がいれば負ける人もいて、ジェイコム株大量誤発注事件のように、一瞬のミスによって数億円の損失を計上した人もいれば、億万長者になった人もいる。シロートにとってはギャンブル性が強く、株式投資は危険だ、というイメージを植え付ける要因でもある。

一方、数10年先までを見据えるのが長期投資家で、まさに温暖化と同じ時間の長さで物事を考える。温暖化では人間活動が二酸化炭素を大気に排出することで気温があがる。長期投資では企業が利益をあげて企業価値を高めることで株価があがる。どちらも気温や株価が日々上下しながら、10〜20年のトレンドで傾向をみれば増加している、という感覚である。そして、日々の株価よりも、企業の活動に注目する。世界的な大富豪ウォーレン・バーフェットもこの投資スタイルである。

本書は、独特な長期投資スタイルで知られる「さわかみファンド」の設立者、澤上篤人氏による株式の長期投資入門書である。"自分のお金にも働いてもらう"というお金の哲学からはじまり、長期投資の基本的な考え方および実践的なアドバイスを紹介する。それを聞いてもやっぱり株式投資はコワイと思う人のために、著者が手がける投資信託を宣伝して、長期でみるとインフレが来ますよという言葉で締めくくる。そんな著者のいう株式の長期投資方針を簡単に以下に詳しくみてみよう。

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株式投資の基本は、株価が安いときに買い、高いときに売る、ただそれだけである。

このとき短期投資家は、今日や明日、もしくは数日後にどの株価が値上がりしそうか、もしくは値下がりしそうかを我先にと予想し、行動をおこす。一方で、長期投資家は、上でも述べたように、株価のトレンドに乗ろうとする。そのため、短期投資家は株価に注目するのに対し、長期投資家は企業に注目する。私の知識を基に両者を簡単にまとめると、こんな感じになるだろう。

短期投資
注目点:株価および株式に関する指標。
売り時:株価がある値よりも下がった(損きり)、もしくは上がった(利益確定)とき。
買い時:株式に関する指標でみて、安い株式。
テクニック:千差万別。ピンからキリまである。
相場全体:ゼロサム(誰かが勝てば、誰かが負ける)。
比喩:まるで快速電車や新幹線、飛行機のように、目的地へ向かっていち早くたどり着くことを目指す。スピードが命。

長期投資
注目点:企業の特徴。
売り時:企業に見切りをつけたとき。
買い時:株価の暴落時。
テクニック:株価が過熱気味になったら、保有株の一部を売って現金保有額を高め、次の株価暴落時に備える。
相場全体:プラスサム(みんなが勝つ。ただし、株式市場が崩壊すれば、みんなが負ける)。
比喩:鈍行電車や夜行列車、フェリーや豪華客船のように、ゆっくりでいいから最終的に目的地へ着けさえすればよい。旅の過程や目的が大事。

著者によれば、長期投資のポイントは利益が出てくるずっと以前の段階で、企業がどんなことをしているかを追う(p.96) ことである。長期投資を始めるにあたり、まず、10年間以上つきあいたい企業を探す。うまく想像できないときは、10年後にこんな未来になっていて欲しいなぁ、ということを考え、その実現をかなえてくれそうな企業に投資すればよい。
そんな企業の株価が暴落したときは、「がんばれ!応援しているぞ!」という想いを込めて買い注文を入れてあげる。そうすることは、株価の暴落を食い止めることにもなるし、買い注文が入ったというメッセージは経営者にとって励ましになる。そしてなにより、その企業が新たに株式を発行して資金を集めたいときに助けになる。もし、応援している企業がキライになってしまったら、そのときは保有株をすべて売り払って、きれいサッパリ縁を切る。これが、長期投資の方針であろう。

実際に私もこれと似たような方針で長期投資を実践している。多少違うのは、企業との付き合い方である。著者がいうように、自分が好きな企業や応援したい企業があれば、そのようにする。しかし、我々のような小市民にとっては、投資額もたかがしれているので、スキな会社を見つけたとしても金額が全然足りなくて投資できない、とか、上場してなくて買えないなんてことがよくある。そこで投資方針を若干広げて、普段の生活でお世話になっている企業にも投資する、という方針を加えてみた。例えば、よく食べるお菓子を製造している企業だとか、よく使う家電を製造している企業など。すると選択肢が増え、投資チャンスも広がる。売り時は、お菓子を食べなくなったとか、違う家電製品に鞍替えしたなど、もうその企業にお世話にならなくなったときである。こうすることで、株価暴落時には、「いつもありがとう。がんばってね。」という想いをこめて、株価を購入できる。

しかし、そんな方針でやっていても、今はいったい株価が下がっているときなのだろうか、もしくは上がっているときなのだろうか、と戸惑うことがよくある。澤上氏は模式図を使って、「株価のゆっくりとした変動を追って、下がったときに買えばいい」というものの、そのゆっくりとした株価の変動を見る目安のようなものが私の知りたいことである。本書によれば、1年に2、3回はかならず株価全般がドカンと下がるときがあります(p.104) とあった。また、夏休みシーズンも株価が安くなりやすいときなのだそうだ。そういうときに株が変えるように、自分のお気に入りの企業を探し、現金を貯めるよう普段努力するのが、長期投資家としての姿勢だろう。

本書を読んだ感想としては、実際に長期投資を実践している私にとって物足りなかった。特に、数億円以上ものお金を運営しているファンドと、我々のような小額個人投資家との違いについて、もっと明確な説明があってもよい気がした。著者は、株価が高くなったときに保有株の一部を売って、次の暴落時に備えて現金保有率を高めておくよう薦める。しかし我々のような小額投資家はもともと保有している株式数自体も少なく、売るとなると保有株全部を売らざるをえなくなったりする。長期投資は簡単だよ、とはいうものの、実際にやってみるといろいろと難しい局面に遭遇するのだ。そういうところの説明は全くなかったので、著者の投資哲学を尊敬する私としては、ちょっと残念だった。

もしあなたが、「長期投資ってどういうものですか?」という質問をYahoo トピックで聞きたいようなときは、本書を読めば、理解できるかもしれない。著者の長期投資哲学はお金に人間性を持たせる。そういう意気込みに共感し、理解したいと思える人なら本書から学ぶべきことはあると思う。

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)
澤上 篤人

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第1章 投資で暮らしを守る時代
第2章 長期投資は難しく考えない
第3章 長期投資を実践しようー株式投資の巻
第4章 長期投資を実践しようー投資信託の巻
第5章 長期投資の先に広がる世界



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