2010年11月03日

プリズンホテル 4:春 (浅田 次郎)

総得点 (15点満点) : 15 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

まさに、芸術作品。

プリズンホテルを全巻読み終えた後の私の感想である。普通、芸術作品というと絵画や彫刻といった美術関係の作品のことを指す。しかし、ここでいう芸術作品とは、そういった美術関係に限らず、人々の心に深く突き刺さり、人々の価値観をも変えてしまう作品のことをいう。そして、そういった芸術作品には当然、小説も含まれる。

たしかに、世の中にはみんながいい小説と思うものも多くある。しかし、作家の浅田次郎先生に言わせれば、そんなのはただそれだけの小説である。そして、そういった小説と、芸術作品とは全く異なる。本文中には次のように書かれていた。

「みんながいい小説だと思うだろう。だが、それだけのものさ。一晩たてば忘れちまう。読者の人生観も世界観も、何も変えない」(p.266)

真の芸術作品というのは、読者を感動させるだけでなく、その人の人生観や世界観をも変える。以前に"ゴールは偶然の産物ではない"の書評で紹介したように、リーガ・エスパニョーラ (スペインリーグ)に所属するFCバルセロナが魅せるスペクタクルなサッカー、ベートーベンが作曲した交響曲第4番の通称"運命"、盲目のピアニスト辻井伸行氏が奏でるラフマリノフ、印象派画家アルフレッド・シスレーが描く風景画など、どの作品も、私の好みではあるものの、人々の心を動かし、価値観を変えるだけの力がある。そして「プリズンホテル」にも、これら芸術作品と同じ印象を私は受けた。

ただし、プリズンホテルが芸術作品と呼べるのは、全4巻を通しての話しである。たしかにプリズンホテルは1巻ごとに飽きない工夫が施されて、個別に読んでも十分楽しめたりはする。それでも全体を振り返ってみてみると、起承転結ならぬ、 起"笑"転結として構成されており、最後の第4巻にてしっかりとすべてを締めることで芸術作品としての完成度を高めている。

もしあなたがまだプリズンホテルを読んでいないなら、こんなくだらん書評を読んでないで、今すぐプリズンホテルを大人買いして、自分の人生と向き合う方がよっぽど有意義な時間が過ごせると思う。以下にアマゾンリンクを貼ってみたので、自分の人生に正面から向き合いたい人は是非、読んでみてほしい。
夏 プリズンホテル(1) (プリズンホテル) (集英社文庫)秋 プリズンホテル(2) (プリズンホテル) (集英社文庫)冬 プリズンホテル(3) (プリズンホテル) (集英社文庫)春 プリズンホテル(4) (プリズンホテル) (集英社文庫)

そしてプリズンホテルを読み終えた方は、よかったら続きをどうぞ。

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プリズンホテルは芸術作品である、とは述べたものの、名作かと言われればそれはちょっと違う気がする。というのも、扱っている背景が極道モノであり、小説としては王道というよりはむしろ邪道だと感じるからである。ただしこれは、作家浅田次郎先生が40歳にしてデビューするという遅咲きで、「分相応」をモットーとしていることから考えると、あえて王道から外れて邪道を選んだとも私には読み取れる。そして、そういうところに"イキ"を感じてしまう。

そうはいっても、プリズンホテルが芸術作品であることに変わりはない。私がそう確信したのは、主人公の木戸孝之介が吐いた次のセリフからである。

「あれは下品な小説だけれども、嘘がない。俺の魂そのものだ。読む人が読めば、その感動は<カルボナーラ>の比じゃない。立派に読者の世界観を変える」(p.267)

ここでいう「下品な小説」がまさに「プリズンホテル」のことを指しているのだと、どうしても私は思ってしまう。というのも、ここで言われていることが実際に私には起きた。そう、「プリズンホテル」を読むことで私の世界観は確かに変わったのだ。ただどう変わったのかを説明するのは難しい。少なくとも、前向きに生きることの大切さや、たとえ不器用な凡人だとしても努力を続けることで人はちょっとずつだけれども成長できる、といった人生の基本ともいうべき心構えは学んだ。そして何より、「プリズンホテル」を読むことで、人が好きになれた。これだけでも、私にとっては十分、芸術作品とよぶだけの価値がある。


最後に、本書でバクチの奥義について述べられていたので、そのセリフを引用して終わる。この奥義はなにもバクチに限らず、ビジネスや人生についても当てはまると思う。

「負けを決して考えるな。誰にどう呼ばれようと、悪い目の出るこたァ考えるな。ドンブリの底に、四五六やカッパギの出るさまだけを、ありありと思いうかべるんだ。それだけをいちずに念ずりゃ、必ず、出る」(p.317)

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浅田 次郎

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プリズンホテルの書評一覧:
プリズンホテル 1:夏
プリズンホテル 2:秋
プリズンホテル 3:冬

浅田次郎の小説の書評一覧:
蒼穹の昴 1
蒼穹の昴 2
蒼穹の昴 3
蒼穹の昴 4
草原からの使者
地下鉄に乗って


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posted by lhflux at 21:10| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
通りすがりに失礼します。

プリズンホテルに感動されたのでしたら、ぜひ「きんぴか」シリーズを。
看護師のマリアさんも出てきますし(マリアさんにとっては本作が本編でしょう)、浅田次郎のエッセンスがもっと荒削りに入っててナイスです。

作者が競馬で生計をたてていたこともあって、幻冬舎文庫の「勝負の極意」もナイスです。博打なぞ素人が手を出すもんじゃねーなーと、ある種諦めのつく良書です。
Posted by ツマ at 2011年02月28日 12:47
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