2010年07月22日

Foreign Affairs Report (フォーリン・アフェアーズ・リポート) 2010年7月号

レビュープラス様より献本していただきました。どうもありがとうございます。

一般市民が国際問題の理解を深めるために、アメリカ視点で書かれた論文を編集したフォーリン・アフェアーズ・リポート。今回は経済面と軍事面がメインである。そんな今月号で私が最も感動し、感銘をうけた記事が、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が語る"市場経済と貧困撲滅"である。これについては、あとで詳しく述べてみたい。まずは本雑誌全体の概要について簡単に紹介してみる。

まず経済面では、中国や新興市場諸国での金融資本に関する記事が5本ある。そのうちの中国関係記事である"金融超大国・中国の政治的ジレンマ"を読むと、アメリカが中国を敵対視というよりはむしろ尊重している様子が伝わってくる。また、"信用格付け会社の功罪"の記事からは、各付け会社のビジネスモデルが学べる。アメリカの各付け会社は数多く存在するが、その中でもビックスリーと呼ばれる3社が市場をほぼ支配していると記事にはある。その理由をポジショニング戦略(みんビズ!書評)という視点で読み解くと理解できる。

次に軍事面は、アフガン関連が1本、ロシアとNATOの関係が2本、北朝鮮関係が2本で構成されている。特に軍事面の情報は、日本であまり接する機会が少ないものの、本書を読めばそれを十分補うことができるように感じる。もともと近代史をあまり勉強してこなかった私は、今回の記事からNATOとロシアの関係を学ぶことができた。1999年当時、NATOはソビエトを共通の敵とみなしていた。つまり、NATOはソビエトに対抗するための軍事連合であった。その後、ソビエトが崩壊してロシアとなった今、NATOの敵はもはやいなくなった。そして今や、かつての敵とみなされていたロシアをNATOに加盟させるべきだ、という議論がなされているようである。

ただ、私が今月号の価値を最も高めていると感じた記事が、冒頭でも述べたムハマド・ユヌス氏による"市場経済と貧困撲滅"である。少なくとも、起業を志す人は読む価値があると感じた。というのも、ビジネスの心構えが簡潔に分かりやすく記載されていて、持つべき覚悟をしっかりと説いているからである。以下に、私が感銘をうけたこの記事について恐れ多くも述べてみたい。

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ムハマド・ユヌス氏の記事を一言でいうと、ソーシャルビジネスについてである。ソーシャルビジネスとは、ビジネスを通じて世界が直面する問題を解決し、後世に足跡を残せる(p.43)ようなビジネスのことを指す。そのユヌス氏が創設し、ノーベル平和賞を受賞するきっかけにもなったのが、グラミン銀行である。グラミン銀行では、バングラデシュの貧困層に少額の無担保融資(マイクロクレジット)を提供するという小さなアイデア(p.43)が基になっている。

グラミン銀行については、勝間和代氏も頻繁に宣伝していて、その名を聞いたことがある人はいると思う。また最近は、ソーシャルビジネスという言葉もあちらこちらで耳にするようになった。その取り組みについて詳しくはWikiグラミン銀行のホームページ(英語)が参考になるだろう。

こういった名声からもわかるように、グラミン銀行の取り組みはすばらしいし、立派だとは思う。けれども私が最も感銘をうけたことが、こういった取り組みではなく、第2世代(親が貧困層を抜け出したその子供の世代)へ向けたコトバである。本当はユヌス氏と第2世代とのやりとりをすべて記したいところではあるのだけれども、ちょっと長いので一部だけを紹介してみる。

第2世代は、その親が貧困層から抜け出すことに成功し、その中には大学や大学院で専門知識を身につけた人も多い。その第2世代が、"どこで仕事をみつけ、どうやって借金を返せばよいか"とユヌス氏に質問した。大学院を修了するにあたり奨学金を借りた私も、状況は彼らと一緒である。

これに対しユヌス氏は、自分自身に向けてある誓いを立てろと言う。毎朝、鏡に映る自分自身に向かって、この誓いを繰り返せと言う。その誓いとは:
私は誰からも仕事を求めない。その代わりに、私は人々に仕事を与える。私は、他の人々のために、仕事を生み出す。(p.52)

貧困層を抜け出すためには、自分で仕事を生み出さなければならない。そして貧困層を抜け出した世代は、次に"他の人々のために、仕事を生み出す"という心意気が必要である。仕事は与えられるわけではない。自分で作り出し、他の人々のために仕事を生み出すビジネスがあってもよいはずだ。なにも貧困層や第2世代に限らず、日本人にだってそういう心意気があってもよい。この心意気を胸に世界が直面する問題を解決していく、それがビジネスのあるべき姿なのだと痛感した。と同時に、甘ったれていた自分の心構えを深く反省した。

PRESIDENT
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目次
金融超大国・中国の政治的ジレンマ
信用格付け会社の功罪
21世紀は新興市場国の世紀に
企業と女性が世界経済を変える
市場経済と貧困撲滅
アフガンの安定を左右する部族文化の本質
ロシアのNATO加盟を
NATOの将来は「域外」での活動にある
北朝鮮に対する巻き返し策を Part 1
北朝鮮はなぜチョナン号事件への関与を否定しているのか


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学問とビジネスの出逢い
Foreign Affairs Report 2010年3月号


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ラベル:Far 雑誌 国際問題
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