2010年05月01日

生物と無生物のあいだ (福岡伸一)

総得点 (15点満点) : 15 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

以前、COURRiER Japon 訪問イベントに参加したとき(詳しくはこちらの記事をどうぞ)、同じ書評ブロガーのkenkura@LIFE IS A MACGUFFINさんが、福岡伸一氏の本を絶賛していた. 最近は理系関連本を読みたい気分だったので、本書を購入してみた.

内容はタイトルにもあるとおり、"生物と無生物との違いは何か"を追い求めた生物学系の読み物. 野口英世にまつわる研究成果の真相から始まり、二十世紀における生命科学史上最大のインパクトを与えたDNAの二重ラセン構造の発見、そして生物と無生物との違いを説明しうる細胞の動的平衡について、生物学的な知見が述べられている. 生物学的知見以外にも、ところどころに科学にまつわるゴシップネタや研究者の悲惨な生態も紹介され、読者を飽きさせない工夫が施されている. 全体が、まるで詩を読んでいるかのような情緒豊かな文体で構成され、生命の神秘を余すとこなく表現している. 文系理系を問わず楽しめる、奥ゆかしい本である.

以下に、科学的な視点で本書を内容を記述してみる. ビジネス的視点はみんビズ!の記事をどうぞ.


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では、生命を決定づける動的平衡とは何か.

簡単なたとえをあげると、川のようなものである. 土手から川を眺めてみると、川の形は変わらない. けれども、その川を構成している水に注目してみると、上流から下流へと絶えず流れている.

どうやら、生命もこれと似ているらしい. 生物は一見すると、形は変わらない. しかし、その生物を構成しているアミノ酸は絶えず新しいものに置き変わっている. 生物が食物を食べて栄養素をとりこむと、以前まで構成さていたアミノ酸を壊し、あらたに取り込んだ栄養素でアミノ酸をまた新たに組み立て直す. つまり、"川"のように生物の形は変わらないものの、"川の水"のように生物の構成物質は絶え間なく変化しつづける. 生命は代謝を行っているのである.

一方、生物が死んで無生物となると、このような流れは止まってしまう. 生物を川とすると、無生物はあたかも湖のようである. 湖では、その形は変わらないし、それを構成している水は静止している. 同様に、無生物では、もはやアミノ酸の代謝が行われなくなってしまう.

生物と無生物を分けるものは、いってしまえば代謝を行っているかどうか、という味気ないものになってしまうのかもしれない. しかし、本書では生物の営みをもっと情緒豊かに表現し、生命の神秘が感じれるようになっている.

本書は、生命の神秘と生物学の発展をうまくミックスした良書といえる. 科学に興味をもつ大人だけでなく、生物学を志す高校生にも読んでもらいたい一冊である.



目次
プロローグ
第1章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
第2章 アンサング・ヒーロー
第3章 フォー・レター・ワード
第4章 シャルガフのパズル
第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
第6章 ダークサイド・オブ・DNA
第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ
第8章 原子が秩序を生み出すとき
第9章 動的平衡とは何か
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
第11章 内部の内部は外部である
第12章 細胞膜のダイナミズム
第13章 膜にかたちを与えるもの
第14章 数・タイミング・ノックアウト
第15章 時間という名の解けない折り紙
エピローグ


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posted by lhflux at 08:36| Comment(1) | TrackBack(1) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「鏡筆の小説」で検索を。ブログが現われます。
作品名「自殺の理由としては十分過ぎる恥」のサンプルが読めます。
鏡筆は筆名。
それで「かふで」と読ませます。
Posted by 鏡筆 at 2010年05月05日 03:01
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生物と無生物のあいだ
Excerpt:  生命とは何だろう。多くの人は、繁殖をするもの、すなわちDNAの複製を繰り返し、次々に子孫に伝えていくものであると、思っているのではないだろうか。難しい言い方をすれば、「生命とは自己複製を行うシステム..
Weblog: 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館]
Tracked: 2010-05-02 11:02
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