2010年02月14日

COURRiER Japon (クーリエ・ジャポン) 2010年3月号

レビュープラス様より献本いただきました. どうもありがとうございます. もっと正確に言えば、レビュープラス様の企画により、クーリエ・ジャポン編集長の古賀様より本雑誌を直接手渡しで頂きました. 関係者の皆様、どうもありがとうございます.

前号のクーリエ・ジャポンのレビューに参加したとき、クーリエ・ジャポン編集部訪問イベントがあった. 講談社の中を見学する機会なんて滅多になく、また、他の書評ブロガーの方々がどういう人達か興味があったので、先日この企画に参加してきた. 私の中では、編集部というと殺気だった部屋というイメージがあったものの、クーリエ・ジャポンの編集部は穏やかでどこか余裕が感じられた. 私の場合、余裕がある雰囲気が大変スキで、イノベーションはそうした雰囲気から生まれると思っているので、かなり好印象であった. 詳細についてはすぐりびんごさんのブログBiiingo!! -乱雑な書斎-をどうぞ. クーリエ・ジャポンのブログもあります.

早速、今月号のクーリエ・ジャポンについての書評を書いてみる.

今月号を一言でいえば、"日本的に見たアメリカ"である. コンテンツを見てみると、アメリカ関係の記事が全体の約1/3を占めている. 記事としては、堤未果氏の責任編集による"貧困大国の真実"、NYタリバン記者の"タリバン拘束記"、ニューヨーカー誌による"ミシュラン覆面調査員とランチを食べてみた"、世界がみたNIPPONにおいてもアメリカ誌から"カプセルホテルで住民登録する東京の隠れホームレス"と"世界のトレンドを引っ張っても海外進出できない日本ファッション"、Google vs 中国やインドなどである. アメリカと日本とを比較した場合、ドラッカー氏のネクスト・ソサエティには、"日本は社会を大切にする。アメリカは経済を大切にする。"と書かれていた. 特に今回のクーリエ・ジャポンでは、日本的な社会を大切にするという視点から、"安全で安心して暮らせる社会とは何か"という問いが根底にあるように思う. この経済よりも社会重視という視点はイギリスメディアもそのように感じていて、"アート市場から見る「世界経済」"という記事の冒頭では次のように述べている. "日本では「美術作品と美術市場は別」という論理が支配的です。絵を楽しことと金銭の話しは別にしておきたいという風潮があるのです。(p.71)". こう見ると、ドラッカー氏のいうように日本は経済よりも社会を大切にする風潮がかなり強い. 今月号のクーリエ・ジャポンもこの"社会を大切にする"という視点で編集されている.

以下、今月号のメインである堤未果氏による"貧困大国の真実"について、考察してみる.

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへblogram投票ボタン
アメリカでは不景気の影響で貧困層が増えている. この"貧困大国の真実"では、その貧困層をメインに、セーフティネット、民間保険、大学進学のための奨学金、刑務所ビジネスの4項目についてのルポを提供している. どのルポにおいても、貧しい人がますます貧しくなる仕組みが今のアメリカ社会にはあることを訴え、貧しい人の声を拾うことでアメリカ社会に疑問を投げかける構成になっている. そして最後に堤未果氏はこう訴える. 戦争経済をはじめ、失業率に貧困、教育に医療、私達が抱える問題は、センセーショナルな報道やリーダー個人のみに焦点をあてた「点」だけをみていては実態が見えなくなる。それらの点同士をつなぎ合わせ、全体を「面」で見ることで問題の本質をすくい取るために、本誌「クーリエ・ジャポン」のような雑誌をはじめ、多角的な視点からの情報源は今後ますます価値をもつだろう。(p.49).

訴えたい気持ちはよく理解できる. そして、彼女やクーリエ・ジャポンの目指す"多角的な視点の重要性"は私も深く賛同する. しかし、今回のルポが多角的な視点から情報を提供しているかというと私にはちょっとものたりなかった. というのも、今回のルポはどれも当事者だけからの視点であり、全体を「面」で見て問題の本質をつかんでいるようには感じなかった. 以下、私が気になったことを書いてみる.

アメリカでは自己責任として、自分で医療保険を選択しなければならない. 中には医療保険に入らない人もいるが、たとえ医療保険に加入したとしても、保障を受けられない可能性がある. 今回のルポにおいて、保険会社の謳い文句を聞いて保険に加入し、その後、病気になって保険料を保険会社に請求しても保険金が支払われなかったケースを紹介している. そして怒りは、保険制度をしっかり確立できない国と保険会社に対して向けられる. 他のルポでも同様に、大学奨学金の貸付金利がものすごく高く(7〜8%前後)、政府保証の奨学金もそれと同程度であること、一度刑務所に入ると保護観察やらなんやらで、ナンヤカンヤ言われて経費をどんどん吸い取られていくという問題を掲げる. このアメリカの刑務所ビジネスでは、囚人たちが安い労働力を提供するので、企業が利益をあげやすい状態なのだそうだ. さらに、犯罪者を保護観察下におくことで、手数料などの費用を徴収し、貧乏人がますます貧乏になる仕組みになっていると記事には書かれている.

どの記事も、当事者は口をそろえて、"私は悪くない. ただ、普通に生活していたいだけなのに. 悪いのは、国や保険会社、お金儲けばかりに気がとられている企業だ." といった意味のことを訴える. 今回の記事には、だからどうすべきだ、という主張は特にかかれていない. しかし、そういった貧困層の人でも安心して暮らせるようにセーフティネットをしっかり確立して欲しい、ということをほのめかす構成になっている. 記事からは、"悪いのは、国や企業で、貧困層の人は何も悪くない、そういう人を救ってあげよう"、と訴えているような印象をうけてしまう. 日本のマスメディアでもこういった手法をよく目にする.

ただ、こういうルポを聞いていつも思うのが、本当にセーフティネットを確立すれば問題が解決するのだろうか、ということである. 仮に社会制度を整えたとしても、詐欺まがいの企業はどうしても出てくる. オレオレ詐欺がいろいろなバージョンへと進化するように、詐欺まがいの企業は手をかえ品をかえてどうしても出てくるし、ちゃんと社会理念をもっていた企業でも、経営者の変更で詐欺まがいの企業へと転身してしまうことがあるだろう. 仮にここでのルポで挙げられた内容を踏まえて救済措置を施したとしても、結局また違う問題がでてきて、いつまでたっても解決しないという悪循環がうまれる. 例えば、"犯罪者にも人権を"とうたって、快適な刑務所生活や出所後のしっかりとしたサポートを提供してしまうと、犯罪者が増えて治安がさらに悪化することにはならないだろうか. 学生奨学金にしても、貸付金利7%前後で借金している人を救済したとしても、社会人になってまた貸付金利の高い借金を背負うということになりはしないだろうか.

大切なのは、貧困層まで教育を充実させ、同じ失敗を犯さないことだと思う. そのためにも、国や企業といった他人のせいにするのではなく、7つの習慣で述べられているように、まず自分にできたこと、もしくはすべきだったことをしっかりと吟味する必要があるのではないか. 他人のせいにするのは簡単である. しかし、それではいつまでたっても似たような失敗を繰り返すことになりかねない. 日本でもアメリカでも、子供の成績がその生徒の家庭の収入と高い相関関係にある、と言われている. 日本では、これを教育費に費やす額が違うからだ、という結論になり、すぐに格差社会だと騒ぎ出す. 貧困層にいるといつまでもそこから抜け出せないという. その抜け出せない理由が本当に社会システムだけの問題なのか、本人が他人のせいにしているためなのか私には分からない. ただ、"貧乏人は大変なんだ. だからちゃんと助けるようにしろ."という角度だけでなく、国側、企業側、大学側からの角度も加えて全体を捉える視点があるとうれしかった.

もうひとつ気になったのが数字に対する考察である.

数字で見るアメリカの「犯罪事情」(p.47)として、1980年から2008年にかけて囚人人口が3倍以上に増加、と書かれている. また世界の囚人の4人に1人が米国人、とも書かれている. これだけをみると、確かにアメリカで犯罪が増加しているように見える. しかし、これらの数値だけで本当にアメリカの犯罪だけが増えているかは分からない. なぜなら、ここでの数値は犯罪件数ではなく、囚人の数だからである. 例えば、30年前と今とで、刑罰の種類や服役期間が違えば、囚人人口の変化に影響するだろう. また、囚人人口の変化には、死刑制度も影響するだろうし、死刑執行がどれくらいの頻度でされるかにも依存すると思う. さらには、刑務所生活の改善によっては囚人の寿命が伸びることもありえる. そして、少なくともアメリカ総人口は1980年から2008年にかけて約2億人から3億人にまで増えている. ここでは数字だけをだしており、特に結論は述べていない. しかし、この数字が示唆することとしては、アメリカの治安が悪化しているということだと思う. 日本のマスメディアでも、こういった都合のよい数値の使い方で視聴者を変な結論へと誘導するやり方がよく使われている. そこが残念であった. もっと、アメリカの犯罪事情が他の先進国と比べてどうなのか、といった考察が聞きたかった.

最後に、今後の発展に期待したい片隅の記事についてちょっと述べてみる.

それは、"今月の「ベストカバー大賞」(p.117)"である. この記事は、ページの隅っこにあって、先月号のときはあまり気にならなかった. しかし、今月号のこの記事をみて、勝手に新たな可能性を感じてしまった. 内容は、世界中の雑誌の中からもっともインパクトが強い表紙を選ぶという企画. 今月号の受賞は中国の雑誌から"アバター"関係を3つ選んでいた. 1位はアバターにでてくる青い生き物の顔をいろいろな表情(めがねをかけていたり、笑っていたり)で写している写真が多数並んでいる. 2位と3位は、普通の人の顔と青い生き物の顔をアップにして横に並べている. こうして比較してみると、表現方法が多彩で、理由はよくわからないもののなんだか楽しい. 実はこの、世界中の雑誌の表紙を比べるということ自体がすごく楽しい企画なのではないかと感じる. そもそも、表紙というのはその号の雑誌を最も代表するものである. 当然、国ごとに文化の違いも現れるだろうし、その国のトレンドも反映しているであろう. その表紙を比べ、深く掘り下げていくことで、1冊の雑誌だけからは見えてこない多面的な物事の捉え方ができるのではないか. 今はまだ半ページにも満たないけれど、まずは1ページを目指してほしいなー.

----------------
なお、今回はクーリエジャポンのキャンペーンがあるので、興味あるかたはここをクリックしてください。キャンペーンの詳細は下記に記載してあります。

【キャンペーン内容】
1)クーリエ・ジャポンのブログレビューを読み、本キャンペーンにお申し込み頂いた方の中から抽選で合計100名の方にFujisan.co.jpにてご利用できるギフト券1,000円分をプレゼント致します。
※本ギフト券はクーリエ・ジャポンのご購入時にご利用頂けます。

【キャンペーン応募期間】

第1期:2010/2/17 - 2010/2/20
第2期:2010/2/21 - 2010/3/9

【当選人数】

第1期、第2期 各50名

【ブログ読者への当選発表】

各期終了後直ちに抽選を行い、当選者の方にはメールにてご連絡させて頂きます。
発表はメールでのご連絡をもって替えさせて頂きます。


PRESIDENT
/~\Fujisan.co.jpへ


↓↓書評ランキングはこちら↓↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへ
blogram投票ボタン
ラベル:COURRiER Japon 雑誌
posted by lhflux at 08:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
訪問イベント行かれたんですね!
お会いできる貴重な機会だったのに、行けなくて残念です。
次の機会を楽しみにすることにします。

僕も早く今月号を読んで書評書きます!
Posted by Taka@中小企業診断士(業務休止中) at 2010年02月15日 23:24
訪問イベントに、Takaさんも来るかな、とちょっと期待していましたが、会えなくて残念でした。勝手にReal Taka さんを想像して、もうしばらく楽しませてもらいますね。

書評も楽しみにしてます、とちょっとプレッシャーを与えてみる。先に書くとなんだか気が楽でいいなー。
Posted by lhflux at 2010年02月16日 12:49
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。