2010年02月11日

粘菌によるネットワークデザイン (science)

ドラッカー氏の強みを生かせという言葉を聞いて、このブログにもサイエンスネタを導入しようと考えてみた. そこで、NatureScience といったメジャー誌に投稿された論文をブログで評してみる. 論文というと難しく聞こえるかもしれないが、ここではできるだけオモシロおかしく伝えてみたいと思う.

今回挑戦してみた論文は、Science に投稿されたRules for Biologically Inspired Adaptive Network Design である. Scientific American のブログには、東京鉄道網の効率性が粘菌によって示されたというタイトルで紹介されていた. また読売新聞でもとりあげられていたように思う.

内容を簡単に説明してみる. まず関東を模した地形をつくる. その模型の東京に、ある粘菌(Physarumというらしい)を置き、その粘菌のエサを関東の主要な都市においておく. すると、粘菌が東京からワサワサと広がっていき、最終的に関東の鉄道網と似たようなネットワークを形成するという話. この粘菌によって形成されたネットワーク網が最適だと仮定すれば、東京の鉄道も最適化されているかもしれないという結論になる. Scientific American の記事に粘菌によるネットワーク網の画像がある.
この論文では、さらに数値シミュレーションを用いて、粘菌の振る舞いをモデル化している. 科学的には、このモデルを用いれば、最適化されたネットワーク網を創ることができる、という知見が得られたことになる. ネットワーク網は何も鉄道に限らず、インターネットの配線でもよいし、交通網でもよい. 数値シミュレーションで簡単に最適化されたネットワーク網が求まるのならば、有用性の高いモデルを開発したことになり、論文のタイトル通りになる.

しかし、この論文の最大のウリは数値シミュレーションで最適化されたネットワーク網を創れることではない. そうではなく、"関東の鉄道網を模した"というセンスが最大のウリなのである.

もし、本論文の趣旨が最適化されたネットワーク網の数値モデルを作成することであったなら、なにも関東の鉄道網ではなくてもよい. 正六角形や台形といった解の分かりやすそうな状況を設定すればよいのである. しかしそこをあえて関東の鉄道網に模したところに抜群のセンスの良さを感じる.

このことによって、まず、日本の鉄道技術の高さをさりげなく世界にアピールしている. おそらく、日本の鉄道網が本当に最適化されているかどうかを証明するのはかなり難しいはずである(私の想像です). でも、これを粘菌でやってみたらなんか鉄道網と似たようになったと言われると、きっと最適化されているんだろうなーと思わず納得してしまう. そして、著者は日本人で北海道大学の研究者なんだけれども関東の鉄道網を使うところをみると、きっと鉄道マニアなんだろうなーと勝手に想像してしまう.

JR東日本がこの論文を使えば世界にうまくアピールできそうですな.
posted by lhflux at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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