2009年12月18日

パスファインダー (大前研一通信)

レビュープラス様より献本いただきました. どうもありがとうございます.

今週は仕事でサンフランシスコに1週間、滞在することになった. いろいろと大変なことは多いものの、大前氏のいう"日本人も国際人としてがんばれ"というメッセージを聞いて、たしかにそうだなと思うところがある. アメリカのホテルに泊まると、お湯がでなかったり、電話が通じなかったり、英語もよく分からなかったりとかなり問題も多い. 英語がよく分からなくても、そんなことを気にしていてはだめで、なにをするにしてもとりあえず英語でコミニュケーションをとらないと生きていけない. 海外でこういうグローバルスタンダードに触れることで日本の便利さが改めて身にしみてくる. そんな完全アウエーな環境で本書を読んだ.

内容は、大前研一氏の発言をまとめてトピックごとに編集したもの. 大前氏の最大のメッセージとしては、"自分の頭で物事をしっかり考えろ"ということであろう. 本書の編集では、まず現在の教育制度、特に偏差値教育の否定から入り、その偏差値教育の弊害に対する被害者である若者達を励まし、これから必要となるであろう大学(ブレイクスルー大学)の提言を行う、という構成になっている. 大前氏の熱いメッセージをうまく集めており、以前読んだ梅田氏のウェブ時代5つの定理と似た雰囲気である. 内容よりも格言を楽しみたい人に向いているかもしれない.

大前氏の発言は梅田氏の発言とも似たようなところがある. 大前氏はこれらかの時代に必要なスキルとして、
・英語を使ったコミニュケーション
・ITによる情報収集
・論理的思考による問題解決能力
の3つを挙げている. 特に最初の2項目は梅田氏もその重要性を強調していたような気がする. そして3つ目の項目は日本人が最も苦手としている能力であろう. これの不足が、日本人のコミニュケーション能力の低さと関係しているように思う. つまり、論理的な説明ができないために、自分の意見が相手にうまく伝わらないという結果を招き、うまくコミニュケーションがとれない原因となっているのではないだろうか. これに完璧主義が加わることで、ちょっとした失敗にすぐにヘコんでしまうところも日本人の悪いクセなのだと最近感じている.

このように、大前氏の発言には全面的に賛成できる部分があるものの、"偏差値教育の否定"に関する意見については、私と見解が異なるため、以下にそれについて書いてみる.


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まず、大前氏による偏差値教育についての考えをまとめてみる.

大前氏によれば、子供の能力を偏差値というモノサシで測ることで、その子供の能力を決めつけているのが問題だという. 子供の親や先生達は、"あなたの偏差値だったらこの程度の学校ね"、というように子供のことを評価してしまい、子供はそれを間にうけて、自分はこの程度の人間だと思うことでもう努力しなくなってしまう、という趣旨である. また、子供の能力を測る試験も答えがすでにあるものばかりで、記憶力ばかりを問う結果になっている. これからは答えのない問題にどうやって立ち向かうかが試される時代である. したがって偏差値なんてものはやめてしまってよい、という結論になる.

言いたい事はそれほど間違っていないように思う. しかし、最後の"偏差値なんてなくてよい"という結論には、私の場合どうしてもならない. たしかに大前氏のいうように、親も先生も"偏差値を上げるために勉強する"ということに視点が置かれているのはまずいと思う. 本来なら、"勉強した結果、偏差値があがった"となるはずで、"偏差値を上げる"こと自体に何の価値もない.

では偏差値がなくなると本当によいか. 例えば、今まで1日30分しか勉強していなかった人が、1日2時間も勉強するようになったとしよう. その結果、自分の能力がどれだけ上がったかを何で調べればよいだろうか. 逆に、1日4時間も勉強している人が、勉強の仕方を変えた結果、どれだけ効率があがったかを何で調べればよいだろうか. 自分の強みと弱みを知るのにどの数字を使えばよいだろうか. どれも偏差値をみればすぐに分かる.

偏差値というのは企業の利益に似たところがある. ドラッカーのマネジメントに書いてあったように、企業は利益を上げることが目的ではなく、社会的責任を果たした結果、利益を得る. 偏差値も同様で、勉強した結果、偏差値があがる. 自分の能力の現状を知るには偏差値がもっとも分かりやすい指標であり、また、自分が努力した結果を調べるために偏差値を用いることは有効であるように思う. したがって、偏差値を上げることが目的になるのはよくないものの、だからといって偏差値をなくせばよいというのはそれもちょっと違うと思う.

ということで偏差値教育の最大の問題は、偏差値に対する正しい見方をみんなよく知らないことなのだろう. 大前氏がいうように自分の頭で物事を考えるようになれれば、周りがウダウダ言っていようが気にする必要はない. 例えば、現在の教育方針において、理科や社会は暗記したらそれだけ点数に結びつく. そのため、結果をすぐに求めるのならこれらを勉強すればよい. 逆に、数学とか英語というのはちょっと勉強したくらいではすぐに点数に結びつかない. 継続して学び続ける必要がある. そのため、数学とか英語の偏差値は徐々に上がる傾向にある. こういったことをちゃんと理解していれば、周りから何を言われようと気にする必要は全く無い. そして逆に"自分は頭が悪い"と認識すればするほど、"頭が悪いのだから普通の人以上に努力して勉強しないといけない"と思うのではないだろうか. まずは、"ヒーローのような特殊な能力というのは自分にはない、自分は天才ではない"ということをしっかりと認識し、それを認識したうえで何をするべきかを考える必要があると思う.

ただ、ここの偏差値教育以外の部分はほぼ全体的に賛同できる意見であった. そこで最後に本書を読んで私がいちばん気に入ったフレーズを引用して終わることにしたい.

"色々なことに挑戦して失敗もしたが、やりたいことは全部やったと残尿感ゼロで人生を終える (p.44)"



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posted by lhflux at 14:30| Comment(0) | TrackBack(2) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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