2009年12月13日

ザ・ゴール (エリヤフ ゴールドラット)

総得点 (15点満点) : 15 点

内訳
文章 (1-5) : 5 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

"ゴール"といってもサッカーの本ではない. その前に"ザ"がついているのがポイントである(たぶん). ここでいう"ゴール"というのは、最終目標という意味に近い.

ことの発端は、先日読んだ理系のための人生設計ガイドである. 以前にドラッカーを読んだとき、もっとマネジメントについて学ぼうと思っていたところに、前述の本で本書が紹介されていた. さっそく購入してみようと思い、本屋を訪れた. そこで実際に本書を手にとってみたとき、買うのを思わずためらった. ぶ厚い、重い、カサばる、という三拍子そろった私の苦手な本だったからである. ただ、ぶ厚いワリには値段が安いことと、中身が小説で読みやすそうだったこともあって思い切って購入してみた. これが正解だった.

本書は、TOCという経営手法の概念を世に広めることを目的としてかかれている. TOCというと、なにやら難しそうな理論に聞こえてくる. しかし本書を小説風に仕上げることでTOCの概念を具体的にイメージしやすくなっている. 主人公の私生活を、読者が飽きない程度に混ぜることで、本書をリラックスしながら読み進めることができる. また、著者のゴールドラット博士が物理学者ということもあって、物事の理解の仕方に科学的なアプローチをとっている点も興味深かった. マネジメントの本としてどこまで役にたつかはワカラナイものの、それでも面白かった.

では、TOCとは何か. 日本語に訳すと全体最適化となる. それに対する言葉として、部分最適化がある. サッカーに例えるなら、選手の力が最大限に発揮できるようにフォーメーションを考えることが全体最適化、先にフォーメーションを決めてから、その陣形にあった選手を起用するのが部分最適化といえるかもしれない. これらのどちらがよいかは、果たす目的によって異なる. 例えばトーナメント戦で勝ち抜くには前者(全体最適化)の方がよいだろうし、個々の選手の力量を測りたいときは後者(部分最適化)の方がよいだろう.

つまりここで大切になってくることは、目標を正しく設定することである. 本書でも、主人公のアレックスをはじめ、多くの工場で目標を正しく設定できていない、ということをはじめに説明している. 数学者のポリアもいうように、"問題をよく理解しなければならない"のである.

以下にTOCの概念を、本書で紹介された順序でかいつまんで説明してみる.

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主人公のアレックスは、自分の工場が赤字経営であるにもかかわらず、"私の工場ではロボットを導入したことで生産性が工場した"と述べた. これに対し、恩師のジョフは、生産性とは目標に向かって会社を近づける、その行為そのものだ (p.54) と諭す.

では会社の目標とは何か. それは、企業の目標はお金を儲けること(p.66)である. これを見分ける財務指標は純利益、投資収益率、キャッシュフロー(p.79)の3つでよい. しかし実際の工場現場では、この指標をみていてもどこをどうすればよいかワカラナイ.

そこでTOCという概念では、次の3つの指標を定義する(p.96).
スループット:販売を通じてお金を作り出す割合
在庫:販売しようとする物を購入するために投資したすべてのお金
業務費用:在庫をスループットに変えるために費やすお金.
その結果、"スループットを大きくする"ということが最大の目標になる.

指標がわかったら、次にスループットを増やすための作業にとりかかる. しかし、実際にどうやればよいかなかなか難しい. そこでポイントとなってくることが、依存的事象と統計的変動が組み合わさった現象を理解することである. それらは以下のように定義される(p.137).
依存的事象:1つの事象あるいは一連の事象が起こるためにはその前の別の事象が起こらなければならない. あとから起こる事象はその前に起こる事象に依存している.
統計的変動:正確に予測できない情報. ある程度の不確実性がある.

細かい話はおいといて、とりあえず、これら両者が組合わさったとき部分最適化だけではスループットを増やすことができなくなる. 簡単にいうと、ある作業に不確実性がふくまれていると、その不確実性が次の作業へと引き渡され、最終的に不確実性がどんどん蓄積されてしまうということである. 例えば、車の渋滞が起きたとき、前方の車が進んだとしても、その下流に位置する車が前に進めるようになるまで時間がかかることと似ている. このとき、前の車が進んでもなかなか進もうとしない車があると、それが系全体の流れに大きな影響を及ぼす. こういった問題児を本書ではボトルネックと呼ぶ. そして、そのボトルネックを如何に効率よく使えるかがスループットを向上さえる鍵になる.

本書で紹介された物の考え方は物理的な考え方をよく反映しているので、最後にそのことについてちょっと述べてみる.

物理学ではフーリエ変換というものがよく登場する. ちょっとシャレていうならば、フーリエ変換というのは、ある時系列を周波数毎に分解するという作業である. これを大ざっぱにいうと、ある時系列という入力値があり、それをフーリエ変換というブラックボックスに入れると、周波数という出力値がでてくる、ということになる. 直感的には、氷を入れて、電子レンジでチンすると、水が出てきたと一緒で、入力値変換して出力値を得ただけである. これがTOCでは、在庫(入力値)を仕入れ、業務費用(変換)を通してスループット(出力値)を得る、となっただけである. 細かい違いはあるものの大局的には、企業は在庫と業務費用に費やしたお金以上にスループットとしてお金を得ないと赤字になる、というのを示すには十分であろう. このように、物事を非常にシンプルにとらえる視点は物理学において大変重要だといえる.


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posted by lhflux at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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