2009年11月24日

子どもの話にどんな返事をしてますか? (ハイム・G・ギノット)

総得点 (15点満点) : 14 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 5 点, 感動 (1-5) : 5 点

私には2歳半になる息子がいる. 今はどこに行くにしてもチョロチョロ動き回り、大変ヤンチャである. 他人からしてみると、うちの息子は元気に動き回るかわいい子供と見えるようだ. 現に私も以前までは、そのような小さくてヤンチャな子をみると、ほほえましい気持ちになっていた. しかしである. 実際の親からしてみれば、とてもじゃないけどそんな悠長な気持ちではいられないことが最近わかった. たとえば先日、子供が電車の中でわがままをいってきかなく、母親がブチ切れて、"もう知らない"といって先に一人で電車から降りてしまった光景を見かけた. 以前の私なら、"あれはアリエナイ"と思っていた. でも今はその母親の気持ちが痛いほどよくわかる. 子供なんかもう放置しておきたい気持ちになる. 息子は平気で道路に突然飛び出すし、運が悪ければ事故に遭遇したであろう状況がこれまでも何度もあった.

そんな子育てに悩んでいるときに、本書に出会った. タイトルはあまり冴えない印象であるものの、中身は抜群によい. 本書を読んでいる途中で、ついにすばらしい子育ての本を見つけた、と自慢したくなってきた. ただ残念ながら、この本を発掘したのは私ではなく、私の妻である.

タイトルは、"子どもの話にどんな返事をしてますか?"となっているが、原書のタイトルは "Between Parent and Child" である. 直訳すると"親子間"となる. 意訳すると、"親子関係の築き方"とか"親と子のコミュニケーション術" といったところであろう. 本書は親が子供の自立を助けるために、どういった会話やしつけをすればよいか、その指南書である. 元が原書であるため、ごくたまに、これは誤訳じゃない?と思うような文章が数カ所ある. そこが本書のオシイところだ.

さて、子育ての最大の目的と親の責任とは何か. この本によればそれは、子供が親から自立して1人で生きていける人間に育てることである. 親は、子供の自立を手助けしなければならない. 当然それは簡単なことではない. 壊れた時計を直すのに専門技術がいるように、子育てにもスキルが必要である. 以下に、子供が自立するために必要な親の知識と技術について、本書の内容を簡単にまとめてみる.

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まず、人が自立するために必要なこととは何か. それは自分の感情を認め、それをコントロールすることである. 人は普通、喜びや楽しさといったプラスの感情はすぐに受け入れられる. 子育てにおいて、子供が何かできたら褒めてあげるといいのも、このプラスの感情を認めることに相当する. しかし、これよりもさらに大切なことは、嫉妬や怒り、妬み、憤り、といったマイナスな感情もきちんと認めることである. 親はまず、何よりも先に子供の感情を理解し、その子供がもった感情をその子に認識させてあげる必要がある. このとき、感情に関しての事実だけを延べるようにし、性格を決めつけるような発言は絶対に避ける.

では上で述べた電車内の母親と息子の例で、母親はどうしたらよかったか. その場面をよくよく思い出してみると、子供は電車から降りるのがイヤなわけではなく、その前から何かと母親のいうことに"やだやだ"と反抗していた. 母親は、まず息子が嫌がる気持ちを理解し、次に息子にそのことを認識させてあげる必要がある. 例えば、
母親:もう何もかもイヤだという気持ちでいっぱいね.
息子:うん.
母親:お母さんのことなんてもう大嫌いって思っているのね.
息子:うん、だってぼくの言うこと聞いてくれないんだもん.
母親:そうね. さっきの改札口で切符をいれたかったのにお母さんがいれてしまったから怒っているのね.
息子:僕がやりたかったんだ.
母親:お母さん、電車に乗り遅れそうであせってしまったの. ごめんね. 駅を出るときにまた改札を通るから、そのときに切符をやってみる?
息子:うん.
母親:じゃあ次の駅で降りるよ.
息子:うん.
という感じでやったらどうであったろうか. こんな悠長なことをしていたら降りたい駅を乗り過ごしてしまったかもしれない. しかし、子供の振る舞いは明らかに変わったはずである. こういった会話をとおして、母親は息子の感情を理解し、それを言葉として息子に話すことで、息子も自分の感情を整理できる. そして母親に自分の感情を理解してもらうことで子供は母親の愛情を認識する.

この本で提唱する子供の育て方は、大変シンプルである. 親は何よりもまず子供の感情を理解し、それを言葉として表現する. ただし、これにはスキルがいる. 自分の感情を言葉にすることすら難しいときがよくあるのに、ましてや子供の感情を理解するなんてすごく難しい. 当然、一筋縄ではいかない. 親には、現在の自分の感情よりも、まず子供の感情を優先して判断するという冷静さが求められている. でもこのスキルが身につけば、子供の成長の手助けになるだけでなく、親自身の心の成長にもきっと役立つはずである.

上で述べたスキルは、人を動かすときも大変有効であると思われる. 以前に紹介したD.カーネギーの"人を動かす"で、"相手の立場にたって、相手のことを深く理解する"というのがあった. 本書によれば、人をよく理解するには、その人の感情をまず理解することが大切である. いきなりその人の感情を理解するのは難しいものの、そのひとつの方法として、相手が"Yes"と答えそうな簡単な質問から始めるという方法がある. そしてその感情をもたらした最大の要因を明瞭にさせる. そうすることで相手はあなたを信頼するようになる.

そして自立するためには、ネガティブな感情にもしっかりと向き合うことである. 人は無能であることを恐れる. 恐れるあまり完璧を求め、それができなくて落ち込む. 自分には能力がないと思って挑戦することをあきらめてしまう. まずは自分の無能さを認識する. 自分より優れた能力のある人が大勢いることを認める. これらを認めることで初めて道が開けてくる. 古代ギリシャの偉人ソクラテスは"己が無知であることを知れ"と説いた. 孫子も"敵を知り、己を知れば、百戦危うからず"と述べた. 武士道でも"分をわきまえる"として、自分の能力を認識することを美徳とする.

と、頭では分かったようなことを述べてみても、やっぱり息子に翻弄される自分がここにいる. "言うは易く行うは難し"という格言が頭をよぎる今日このごろであった.


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posted by lhflux at 14:10| Comment(3) | TrackBack(1) | 子育て | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
子は親の鏡ですね。
Posted by 出会いぇ〜出会いぇ〜 at 2009年11月24日 19:14
私はまだ子供を持つ身では無いですけれど、いずれは子供を持ちたい。と思っています。
私自身、子育てという事にまだまだ見えない部分が多いですが、自分自身に置き換え、自立する為に自分の無能さを認めるという事、とても大事だと感じました。

どうもありがとうございました。
Posted by Marunaga at 2009年11月24日 22:49
出会いぇ〜出会いぇ〜 様:

コメントありがとうございます。まさにそうですね。子供の口癖が自分と同じで愕然としてしまいます。

Marunaga 様:
いつもコメントありがとうございます。
子育ての大変さと楽しさはやってみて始めて知りました。子育てといっても、子供だけでなく自分も成長するというのが大切なのだと私もつくづく感じております。実行はなかなか難しいですけど。
Posted by lhflux at 2009年11月25日 07:47
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