2009年11月18日

サブプライム問題の正しい考え方 (倉橋 透・小林 正宏)

総得点 (15点満点) : 11 点

内訳
文章 (1-5) : 3 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

先月、丸善本店(東京駅)の4階に松丸本舗という本屋がオープンした. 丸善の中に特設された小さなスペースに、大人の雰囲気をかもしだした本棚が迷路のように並んでいる. 本はジャンルごとに仕訳されており、きちんと収納されている本もあれば、横に寝かせて置かれている本もあった. そんな本棚からは秩序というよりも乱雑という言葉が適しており、本屋というよりは、誰かの本棚を見ているような感覚におちいる. そして、他人の本棚を見ているときに、お、この本おもしろそう、という感覚で思わず手にとってしまったのが本書である. 経済学の深みにちょっとはまろうかなと思っていたところにサブプライム問題というキーワードが私にマッチした形だ.

サブプライム問題といえば、今回の金融危機を引き起こした原因として、マスコミでも大きく取り扱われている. そして、マスコミの報道を聞く限りでは、ふつうは住宅ローンを借りられない低所得者(サブプライム)にお金を貸したために返済できなくなって金融危機の引き金となった、という話である. 本書の"始めに"の部分でも、サブプライム問題は、「きちんと返済ができそうもない人に、お金を貸してはいけない」という当たり前のことが守られなかったことに原因がある。と書いてある.

ただ、私は常々、本当にたったそれだけの問題か疑問をもっていた. なんできちんと返済できそうにない人にお金を貸すのか、その理由がワカラナイ. 借りる方も、返済できないのになぜ借りるのか、その理由もワカラナイ. 本書の第2章と第3章を読んでその理由が理解できるようになった気がする.

以下、サブプライム問題についてこの本の内容を基に解説してみる(ちょっと長くなります).

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まずは、アメリカにおける住宅ローンのビジネスモデルについて考える. 基本的にはお金を借りる人と貸す人の関係をしればよい.

まず、住宅を買いたい人は銀行などのローン会社から住宅購入のための資金を借りる. 日本では、貯蓄率が高いために銀行のようなローン会社は資金を豊富にもっている傾向にある. そういったローン会社は手元資金でお金を貸すことができる. しかしアメリカでは貯蓄率が低く、ローン会社は元手資金が不足している. アメリカのローン会社はお金を貸したくても手元に資金がないのである.

そこでローン会社は考えた. ローンに必要な資金を債権として投資家(もしくは投資銀行)に売ればよいではないか. ただ普通にやると売れないので、債務者の金利を投資家と分けあえば彼らも納得するだろう. こうすれば、手元に資金が少ないローン会社でも、投資家からお金をたくさん集め、それを貸すことで利益を得ることができる.

これはお金の余っている投資家にとってもよい話である. ただし、"おーこれはおいしい"といって、ここでうっかり話にのってしまうのはただの"投機家"である. "投資家"はここでリスクについて考える. もし債権者がお金を返せなくなったらそのリスクは誰が負うか. このままでは投資家である. そこで投資家はローン会社に提案した. もし、ローン会社が債務リスクを負うのならお金を投資しても良い、と.

これにはローン会社もYesと言うしかない. そこでローン会社は債務者を厳密に審査して格付けし、返済できそうな人をプライムと位置づけ、そのローンをプライムローンと名付けた. プライム層は返済をきちんとしてくれる確率が高く、この審査さえしっかり行えばローン会社の債務リスクは小さくできる. アメリカではクレジットカードを作るのがかなり大変なのだが、それはこのプライムの信用力を得るのが大変だからである.

この住宅ローンにおけるビジネスモデルは、住宅を買うためにお金を借りる人、ローン会社、投資家の3者にとってみんなに利点があり、大変よいシステムだと思われる. このままならみんなが幸せでいれたのに、3つの要因が重なることで今思えば破滅への道を進むこととなる.

ポイントとなる3つの要因は、住宅神話と人口増加、そして金融緩和である. 1975年から2007年まで、全米で住宅価格が一斉に下落したことが一度もなかったことから、住宅価格はこの先も上昇し続けるという神話が広まった. これに加えてメキシコからの移民も増え、人口が増加した. 人口が増えれば住宅の需要も増えるので、住宅価格がさらに上昇する. しかし、移民はクレジット履歴がないため、プライムローンを借りることができなく、住居を買うことができない. 人口が増えても住居がない場合は、スラム化して治安が悪くなってしまう. そこで金融緩和(具体的にはFF金利の引き下げ)をして、信用力が多少劣るサブプライム層に住宅ローンを借せるようにした. ここまでは、ある意味しょうがないところではあると思う. しかし問題はここからである.

まず、サブプライム層の人としては、多少金利が高くてもサブプライムローンを借りて、がんばって2年間きちんと返済できれば、そのあと金利の優遇されたプライム層に昇格してローンの借り変えをすればよい、という戦略がある. もし仮に、途中でローンが返せなくなっても住宅価格が上昇するのだからそのときは住宅を売れば良い. 住宅ローン会社も、ローンが返せなくなっても住宅を担保にしているので、その住宅を売れば大丈夫という皮算用が働く. ローン会社はこのサブプライムローンとプライムローンを合わせて証券化し、それを投資家に売った. サブプライムローンは破産リスクを含んでいるものの、プライムローンに対する比率が小さいうちはあまり大きな問題にならなかったと思われる.

しかし、これに味をしめたローン会社はサブプライムローンをどんどん増やした. これに金融緩和が加わることで金余り状態となり、審査もどんどズサンになっていく. 結果的に全体の住宅ローンに対するサブプライムローンの割合が増加していき2005年には2割りに達する. そしてこのサブプライムローンを含んだ証券が世界中にバラまかれ続ける.

ズサンな審査では、住宅ローンの金利設定もズサンで、2006年には2年固定金利が全体の5割を占める. この間、FF金利(アメリカの政策金利)が増加していた. そのため、固定金利が終了したあとは、変動金利となり突然月々の返済額が一気に上がることになる. 実際に、2006年頃から徐々に延滞率も増え始め、差し押さえ物件も増える. そうなると悲惨である. 住宅に対する需要が減り、住宅価格も下がり始める. すると破産リスクを負うローン会社もだんだん経営が厳しくなり、ついには会社の破産という事態になる. 会社が破産すると、投資家にもその被害が及ぶ. サブプライムローンを含めた証券は世界中にバラ巻かれていたため、その被害が世界各地に飛び火した. そうなるともはや何がなんだか分からなくなり、サブプライムローンによる正確な被害額も推定できない状態となってしまった.

というのがサブプライムローン問題の概要だと思われる. 結局、サブプライムローンの教訓としては、我々一人一人がきちんと金利に対する理解をもつことだ、というすごく当たり前のことになる. たとえば、"金利が上がると銀行の利子が増えてうれしい"という認識しかない人は、かなり危険である(以前の私がそうでした). 私も金利のもつパワーをしっかり勉強しようと思った.


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posted by lhflux at 08:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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