2009年10月30日

はじめての経済学 上 (伊藤 元重)

総得点 (15点満点) : 12 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

これまで、日経ビジネスに掲載された経済学者の飯田泰之氏によるオススメに従って、こんなに使える経済学東大を出ると社長になれない、といった経済学の本を読んできた. これで経済学の感覚がなんとなくつかめてきた人は、次のステップとして本書を読むことを飯田氏がススメていた. 彼の教えに従って、本書を買ってみた. タイトルには"はじめて"とあるものの、まだまだ経済学初心者の私にとっては、なかなかの内容であった.

本書は全部で5章に分かれている. この5章は、さらに大局すると次のような3部構成となる. それらは、導入部、マクロ経済学、ミクロ経済学の3部である. 厳密にはマクロ経済学とミクロ経済学とは明確に分類できないものらしい. ただし、本書の言葉を使って大まかにいうと、マクロ経済学は一国経済の全体像を捉える枠組みであり、ミクロ経済学は個人や企業の経済的な意志決定・選択を解明する枠組みであるとなる.

以下に詳しく書いてみる.

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まず第1章は経済学の導入部である. 論文でいうイントロダクションに相当するもので、なぜ経済学というものが必要かということを、身近な例を交えて紹介する. といっても、為替や金利といった経済用語に慣れた人にとっての身近な例であり、決して一般の人にとって身近かどうかはワカラナイ. 日経新聞やワールドビジネスサテライト(WBS)を見たことも聞いたこともない人は、本書を読んではいけない. さらに著者の伊藤元重氏をWBSで見たことない人も注意した方がよい. 本書を買ったことをきっと後悔することになる. ましてや、マクロ経済学の"まくろ"をうっかり"まぐろ"と読んでしまった人は論外である.

次は、第2章と第3章のマクロ経済学である. マクロな視点をかみ砕いていうと、日本といった国単位からみた経済学に対する視点である. 経済に市場原理を導入する限り、国は経済に対しておおよそ無力である. そのため今回のリーマンショックのような経済危機に対して、国がどう行動すべきか明確な答えはワカラナイ. だからこそ、世界の国々はあーでもない、こーでもないといろいろ議論するのである.

国が経済に対して無力だといっても、経済を多少コントロールする術はもっている. そのひとつが金利である. 国はある程度自由に金利を設定することができ、それによって経済をコントロールしようとする. 日銀のゼロ金利政策というのもそのひとつである. 国際社会では各国の金利差が為替相場の変動をもたらし、各国の思惑も相まって経済がますますよく分からないものになっていく. 国の税制も経済に影響するものの、税金は種類が多く、また、国ごとによっても仕組みが違うため、税金が経済に及ぼす影響を判断することはなかなか難しい.

といったことが、本書の第2章と第3章に書いてあったような気がする.

最後は第4章と第5章のミクロ経済学である. ミクロ経済は、簡単にいうと、個人個人の思惑を考慮した視点である. 例えば、あるモノを売りたい人と、あるモノを買いたい人がいたとする. 単純に考えれば、売る人はできるだけ高く売りたいし、買う人はできるだけ安く買いたい. この両者の気持ちを図示すると、需要曲線と供給曲線というのが描ける. これら両曲線が交差すれば、その値段で売買が成立する. これがミクロ経済の基本的な考え方だそうだ.

ただ、世の中はそんなに単純ではない. 売る人もあまりに売値を高くしすぎると罪悪感が働くかもしれない. 逆に買う人もあまりに買値が安いと、この商品は不良品なんじゃないかといった不安を覚える. こういった感情は今の経済学では考慮しておらず、今後の課題となっているいようだ. 最近はこういった感情も考慮する行動経済学という学問が流行っているみたい.

ミクロ経済学のもう一つ大事な理論がゲーム理論である. 本書でも、ゲーム理論や囚人のジレンマについて述べている. 詳しいことは、wikiによる囚人のジレンマをみてもらうとして、私が常々気になっていることを最後に書いてみたい.

ゲーム理論の基礎は、自分の戦略と相手の戦略を考え、最適な解を求めようとすることである. 以前に読んだ東大を出ると社長になれないでも、いずみの店の買収に対してどういう戦略をとるかという話があった. そこでは、相手の買収に応じた場合、自分の利益がいくら、相手の利益がいくら. 逆に買収に応じなかった場合、自分の利益がいくら、相手の利益がいくら、といった計算をしていた. こうやって数値化することで、最適な解を求めようとするのがゲーム理論の考え方であると、私は理解している.

私が疑問なのは、この利益の決め方である. 上の例でも、利益がそのように決まれば最適解は求まるのだが、その利益をどうやって見積もるかについては何も書かれていない. もし自分がゲームの支配者で、自分の意見で各プレイヤーの利益を決めることができる場合はそれほど問題はないだろう. しかし、企業買収や企業防衛の戦略を考えるときにゲーム理論を利用しようとする場合、この利益の見積もり方を誤ると、とんでもない失敗を犯してしまいかねない. "ゲーム理論"といわれるとなんだか完成された絶対的な理論のように聞こえてきてしまうものの、言葉に惑わされて本質を見失わないように心がけたい.

なお、本書の書評を短くまとめた内容でみんビズ!にも掲載してあるので、よかったらそちらもどうぞ.


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posted by lhflux at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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