2009年05月16日

Physics of the impossible: Part I (Michio Kaku)

総得点 (15点満点) : 12 点

内訳
文章 (1-5) : 4 点, 内容 (1-5) : 4 点, 感動 (1-5) : 4 点

本作品は、カクミチオ氏による前作"パラレルワールド"に続く第2弾. "パラレルワールド"を読んで以来、すっかりカクミチオ氏のファンになった私は、ちょっと背伸びして原著(英語)に挑戦してみた.

本作品は、スタートレックやスターウォーズといったSF作品に登場するテクノロジーについて、理論物理学者の著者が物理学を交えて分かりやすく解説している. そのテクノロジーのうち、人類が将来実現可能かどうかという視点で、次の3つにカテゴリー分けしている.

カテゴリー I: 21〜22世紀までに実現可能なテクノロジー
カテゴリー II: 理論的には遠い将来に実現されそうなテクノロジー
カテゴリー III: 現在の理論では不可能なテクノロジー

さすがに背伸びしただけあって、カテゴリーI を読むだけでも2ヶ月以上もかかってしまった. そんななので、全部読み終わるには、あまりにも時間がかかりそうである. とりあえずは、カテゴリーI だけを今回ここで書くことにして、 残りのカテゴリーIIとIIIは、次の機会にしよう. そのほうが、のんびり読めるし.

まず、カテゴリーI に分類されたテクノロジーが全部で10項目あるので、下記に列挙してみる. 各項目は、それと関係したテクノロジーに関する日本語wikiへ飛ぶようにしてみた. 私のお粗末な日本語訳も書いてみた.

1. Force Filed (バリア)
2. Invisibility (透明人間)
3. Phasers and Death Stars (近未来のすごい武器や兵器)
4. Teleportation (瞬間移動)
5. Telepathy (テレパシー)
6. Psychokinesis (念力)
7. Robots (ロボット)
8. Extraterrestrials and UFOs (宇宙人、UFO)
9. Starships (宇宙船)
10. Antimatter and Anti-universes (反物質エンジンと反宇宙)

この中で、私が興味をもった項目が、2, 7, 9,10の4項目あったので、それらを取り上げてみよう. 9と10は関係しているので、一緒にあつかってみる.



2. Invisibility
これは、透明人間やハリーポッターにでてくる"透明マント"のようなテクノロジーである. 透明人間になる方法はいろいろあるが、例えば、映像技術を使って、カメレオンのように周りの景色と自分を一体化させてカモフラージュさせる方法が挙げられる. また、ハリーポッターの"透明マント"を作成するには、可視光を曲げればよい. つまり、マントを使って自分に入射してくる可視光を曲げ、そのマントを可視光が迂回するようにすれば、透明になれるのである.

面白いと思ったのは、このテクノロジーが実現したときの考察である.

もし、透明人間になるテクノロジーを手にいれたなら、まず、モラルの問題が浮上する. あえて書くまでもないかもしれないが、漫画の名作ONE PIECE の48巻にて、サンジの言葉をここに引用してみよう.

おれは夢を馳せた!! もしそうなったらその能力(透明人間になる能力)で女湯... イヤどんな事をしてみようか.

サンジの熱い思い以外にも、万引きなどの犯罪が多発する可能性も高い. この技術は社会問題にもなるだろう.

もうひとつ興味深かったのが、透明マントについての考察である.

もし、透明マントによって可視光を曲げ、まわりから見えなくなったとする. そうなると、透明マントの中にいる人には光が届かないため、今度はその人が外の様子を見る事ができなくなるのである. つまり、周りから見えなくなったけど、自分も周りを見えないという、なんとまあマヌケな情況に陥ってしまう. 解決策としては、のぞき穴を開けたり、映像技術を使って、外の様子を透明マントの中に映し出すという方法があるが、それだと、のぞき穴や外の映像を撮る機器に周りのひとが気づいてしまう. このマヌケなところがなんかいい.

7. Robot
ロボットと聞いて、我々が想像するのが、ドラえもんのような人(?)型ロボットであろう. このようなロボットを作成するにあたり重要になってくるのが、ロボット自身がいろいろと学習していく、人工知能(AI)である. この本でも、特にこの人工知能について述べている.

もしロボットが創られて、掃除や洗濯といった家事をまかせられたら、どんなに楽だろうか...と思う人は多いだろう.

しかし、私がいいたいことは、現在すでに掃除はロボットに任せることができる、ということだ.

それを可能にするのが、お掃除ロボット"ルンバ"である. 具体的には、丸い円盤のような格好をして、部屋中を動き回り、掃除が終わったら、自分で充電器まで戻って充電しているのである. 我が家はこのルンバを導入して1年が経過したが、今はもうルンバなしという情況が考えられない. ルンバの魅力を語りだすと長くなるので、この辺で終わりにするが、このルンバにも人工知能が搭載されている. 地雷探査機の開発で得られた技術を掃除機に適用しているようだ (ルンバが欲しい人はこちらからどうぞ).

9. Starships & 10. Antimatter and Anti-universes
この項目は、どちらも関係しているので、一緒に扱ってみる.

一番のポイントは反物質エンジンであろう. これはすごい. 著者が素粒子論の専門家だけあって、説明もなかなか詳しくかいてある. びっくりしたのが、エネルギーの変換効率である. たとえば、原子力の場合、物質の質量からエネルギーを取り出すのであるが、そのときの効率が1%程度である. これが反物質の場合、物質の質量からエネルギーをとりだすときの効率が100% (実質的には50%)になるらしい. 言うなれば、1基の反物質発電所で100基の原子力発電所をまかなうことができる(正しいか微妙だが). つまり、宇宙船を創るときにその動力をどうするかが問題になるが、反物質エンジンができれば、その動力の問題もかなりの部分を解決するらしい.

それでは、その反物質というのは何か. 私もよく分からない. どうやら、素粒子は2つの対でできていて、その対がお互いに相反する性質をもち、そのひとつを反物質というようだ. 例えば、電荷にプラスとマイナスがあるように、物質にも反物質があるらしい. 普通、電子というのはマイナスの電荷を帯びているのだが、世の中には陽電子というのがあって、それはプラスの電荷を帯びた電子で、その陽電子が電子の反物質に相当する. 陽電子を知らなかった私は結構びっくりした. そして私がさらに驚いたことは、この陽電子をとりだす実験を、カクミチオ氏は高校生のときの授業で習ったそうである. 恐るべしアメリカ. しかもNASAは反物質エンジンの開発に成功したという噂が(これ).

最後に、私がこの本を読んで気に入ったフレーズがあったので紹介してみる.

I canna' change the laws of physics, Captain!
by Scotty, chief engineer in STAR TREK


スタートレックに登場するチーフエンジニアのスコッティの言葉らしい. 直訳すると、”船長! 私には物理法則を変えることはできません!"となる.

私はスタートレックをみたことなく、この場面をしらないので、勝手に妄想して楽しんでみよう.

まず、スコッティは船長に無茶な注文をつけられたと想像する. 例えば、目的地まで1年かかる経路を1ヶ月で到着するようにしろ! みたいなことかもしれない. もしくはもう船の燃料がないのに、燃料をなんとかしろ、みたいなことかもしれない. これを言われたスコッティは"そんなことは不可能だ!"と言いたかったに違いない. しかし、アメリカ文化は"不可能"といったような否定的な言葉を嫌う傾向にある(と思う). しかも、危機的情況では、否定的な言葉を使うと士気が下がる可能性もある. そこでスコッティは考えて、こういう意味のことを言った. "私には物理法則を変える技術がありません".

これなんかいいなー.



↑↑私が読んだのはこれ↑↑




posted by lhflux at 17:14| Comment(2) | TrackBack(2) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは.コメント&リンクありがとうございます.自分もlhfluxさんの記事をいつも興味深く読ませていただいていますので,リンクさせていただきました.

“I canna' change the laws of physics, Captain!”

なんだか,洒落てますね.ネガティブな状況をある種のジョークで表現するって,アメリカとかではよくありそうですけど(イメージです),このジョークは物理法則に対する人々の認識を暗に示していて面白いです.

今後ともよろしくお願いします!
Posted by simplegg at 2009年05月23日 15:06
simpleggさん、こんにちは.

私が勝手にsimpleggさんのブログへのリンクを貼ってしまったにもかかわらず、相互リンクしていただきまして、どうもありがとうございます.

大変うれしいです.

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします.
Posted by lhflux at 2009年05月24日 09:43
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